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あの名シェフから若き俊英まで 新たな時代を築く
東京中華を追う!
Hitosara special

ここ数年でグルメ界を大きく賑わせているのが、続々と誕生する中国料理店。
その勢いは令和になっても変わらず、2019年も新店ラッシュとなった。
しかも、その多くは中国料理の可能性を示す個性派ばかりだから面白い。
新たな時代の幕開けを予感させる、中国料理の新鋭を取材した。

Photographs by Noriko Yoneyama , Takuya Suzuki , Shinjo Arai , Mami Hashimoto
Text by Shinji Yoshida , Ai Ozaki , Maria Kawashima / Design by form and craft Inc.

  • ソムリエと国際薬膳調理師の資格を持つ、料理長の上笹俊氏。
    南青山の薬膳中華の名店【エッセンス】に7年間在籍、そのうちの4年間はスーシェフとして腕をふるったという実力の持ち主

    中華寝台 チャイニーズベッド

    新進気鋭の若きシェフが放つ
    “温故知新“の絶妙な匙加減

     「ヌーベル・シノワに振り切りたくはないんです。“王道をちょっと崩す”くらいがちょうどいい」
     そう語るのは、弱冠28歳にして【中華寝台】の厨房を任された若き料理人、上笹俊氏。10月に誕生したばかりのこちらの店は、以前まで【SHIBUYA bed】という名のイタリアンだったが、装い新たにリニューアル。中華料理店として新たなスタートを切った。
     料理監修を担当するのは、六本木のモダンチャイニーズ【虎峰】のシェフ・山本雅氏。広東料理を得意とする上笹氏と、四川料理人としてキャリアを積んできた山本氏のコラボにより完成したのは、広東と四川、イノベーティブとオーソドックスが咲き乱れる、珠玉の12皿だ。
     見目麗しい前菜は、フレンチ風の盛り付け。白眉なのはブルーチーズを添えた「くちどけ加藤ポーク」の叉焼だ。甜麺醤に醤油、エシャロット、そしてハマナスの花の香りが溶け込むリキュール・メイクイル酒を混ぜたタレに半日間漬け込むことで、豚バラ肉が格段に柔らかくなり、香り高い叉焼に仕上がっている。ペアリングのワインとの相性も言わずもがなだ。
     献立は客の想像力を掻き立てるようにと、あえて抽象的な表現に。「海老 前編」、「海老 後編」と題した料理には、中華では珍しいオマール海老を使用。前編・後編でそれぞれ頭と胴体を供するという演出が遊び心満載だ。とはいえ、食材やプレゼンで変化をつけても、調理法は基本に忠実。これぞ上笹氏曰く、“王道をちょっと崩す”という塩梅なのだろう。海老の味噌にXO醤をのせて蒸し、そのエキスでリゾットをつくるといった手の込んだ料理などにも、その手腕を垣間見ることができる。
     「素材をそのまま活かしたり、自分の持てる技術で魅せるひと皿に仕立てたり。得意の海鮮で季節を感じられるようなメニューをつくり上げていきたい」
     物腰柔らかななかに、静かな情熱を湛えた上笹氏。その言葉に、来る年の春夏秋冬が待ち遠しくなる。

    • 白バイ貝、ホッキ貝、ツブ貝を始め、様々な魚介や肉をバランス良く配した前菜。最中の中にフォアグラを詰め込んだ
    • 献立名は『香りの玉手箱』。蓋を開けると、四川産の朝天唐辛子、山椒、八角、ローリエ、桂皮の香りがふわりと漂う
    • ワインは産地にこだわらず、料理に合わせてチョイスして、意表を突くペアリングを心掛ける。ペアリングはノンアルコールも用意

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