千葉の トップレストラン | ヒトサラ
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フランス料理 ル・クール
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『猪と牛蒡のパテ・アン・クルート』。この料理は2016年春、日本シャルキュトリ協会が主催する『パテ・アン・クルート世界選手権アジア大会』にも出品した、シェフのスペシャリテ。パイ生地には牛蒡茶も練り込み、香り豊かに
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『テット・ド・ポー』。タンや耳など食感も楽しく、トッピングにフォアグラ。千葉産野菜のグリルも添えた
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『鮎のヴィシソワーズ』。コンソメで煮た鮎ムースに、さらに稚鮎のペースト。ポテトのエスプーマで仕上げた
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一軒家のフレンチで、メインダイニングは2階に。落ち着いた空間で、ほぼフランスものというワインも充実
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2008年、千葉で独立した石本省吾シェフ。現在地に移ったのは2013年。変わらずフレンチの魅力を伝えている
美味のために、手間は惜しまず
フレンチの心意気を皿で表現シンプルに美しいが、その実、骨太な心意気と丁寧な仕事がいくつも隠されている。【ル・クール】オーナーシェフ・石本省吾氏の料理から得た、率直な感想だ。例えば、この日に供したメインのひとつに、『テット・ド・ポー(豚の頭)』というフランス伝統料理のアレンジ版がある。本来は冷製で、シャルキュトリ(食肉加工品)の一種なのだが、氏はそこからさらにアルザスのリースリングなどで風味付けした豚肉ミンチを巻き込んで成型。これだけでも十分な手間だが、提供直前にはサッとソテーし、香ばしさも加味している。
「手間をかけないと美味しくならない」のは当然で、「事前にいろいろと仕込みつつ、仕上げにも、手をかけて“出来立て感”を出す」。これが氏の身上なのだ。
料理のことを尋ねると、「シャルキュトリ、内臓、ジビエが僕は好きで、得意」と即答。嬉々として調理する様にも好感が持て、「僕の料理は素材の持ち味を引き出してから凝縮し、それを素材に戻してやるイメージ」とも。骨からもしっかり持ち味を引き出したいから肉も丸のまま仕入れることが多いのだと言う。
「何から何まで一からつくっていますから」。微笑む石本氏。2013年の移転を機に個々の好みでコースが組み立てられるようプリフィクスを採用したのも、個人の嗜好を大切にする、フランスでは当然の食文化を見倣ったがため。千葉に【ル・クール】あり。そう思わせるに十分な魅力が、この一軒家には充ち満ちている。 -
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TRATTORIA ALBERO
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『お任せの前菜6種盛り合わせ』。イタリア郷土料理を揃え、パスタとメインが選べるプリフィクスコースより。この日は自家農園のトウモロコシを使った冷製ポタージュ、砂肝とフォアグラのリエット、メヒカリのエスカベッシュなど
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『美元豚のグリル 粒マスタード添え』。千葉が新たに開発した銘柄豚をシンプルに。付け合わせの野菜も新鮮
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なかなかお目にかかれないトスカーナパン。みっちりした仕上がりに技を実感。パスタソースとの相性も抜群
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最奥部の半個室は落ち着いた雰囲気で人気。ほかに、窓から陽光が差し込むテーブル席など、2つの空間がある
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2006年より腕を揮う小山裕之シェフ。師と仰ぐシェフの「カッコいいでなく、ソソる料理をつくれ」が座右の銘
革新コースと、伝統コースで
実証するイタリア料理の可能性2005年に誕生して10年超、今や千葉を代表する存在にまで上り詰めた【トラットリア・アルベロ】だが、小山裕之シェフは「まだ道半ばです」とひと言。この店が評判を得たのはまず、和の食材を多用しつつも見事にイタリア料理を昇華させてきた、氏の手腕にある。
地産地消を是とし、野菜は自家農園のほか、県内複数の生産者から直に仕入れ。魚介も肉も千葉県産が中心だ。コースのみを供す料理に相対するのはバイ・ザ・グラスが基本のワイン。ひと皿で一杯というマリアージュがもたらす感動を伝えてきた。道半ばとシェフは謙遜するが、「これからも“ソソる”料理を作り続けていきたい」。己の道を邁進する姿勢は不変なのだ。
その事実を端的に示すのが、数年前から取り組む自家製トスカーナパン。「ほんの少しの塩と、あとは小麦粉と水、天然酵母だけ」という素朴な味わいだが、現地では料理をもっと美味しく食べ、その皿を完結させるために欠かせない代物。練る行程に技術が必要で発酵にも時間がかかるため、1日にわずか2本ほどしかつくれないが、「自分らしさの出せるパン」だから取り組んでいる。昨今ではイタリアの伝統料理をアレンジせず揃えるプリフィクスコースも用意した。
「体裁は武骨だけど、手間はしっかりかけられ、そのことが食べ手にも伝わる。それが僕の“ソソる”料理」
和の食材を多用した革新的コースと伝統料理のコースが両輪となり、この店はさらに高みを目指す。 -
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やさい料理 つむぎや
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野菜料理に注力する店主の戸島圭吾氏。「ニンジンを焼いただけなのに、サツマイモのように甘く、ホクホクとした食感。そんな家庭では真似できないような料理をお出ししたい」と野菜の魅力を発信している
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『前菜の盛り合わせ』。この日はモロヘイヤとキノコのお浸し、豆腐の燻製、水茄子のお刺身などが登場
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先付に供されたのは『夏野菜のトマトゼリーがけ』。丹念に抽出したトマトの汁をジュレ状にして味を調えた
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野菜は、柏の「風の色」という農家をメインに無農薬のものをできる限り厳選。地元直売所からも仕入れる
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カウンターとテーブルからなる店内。余計なものを飾り付けない、シンプルな内装が料理の味をより鮮明にする
食材を厳選し滋味を引き出す
旬の野菜料理をコースで味わう「単純に野菜とお酒が好きなだけだったんです。ただ、野菜中心の店となるとしっかりとお酒が飲める店が少ない。だったら自分でやろうと始めた店なんです」オープンのきっかけを、店主の戸島圭吾さんはそう話す。もともとは、日本料理の板前だった戸島さんは、野菜好きが高じて、自然農法を学び、マクロビオティックの料理店にも勤めた後に店を開いた。というと、「ストイックなお店?」と勘違いされそうだが、さにあらず。野菜は極力無農薬、自然農法栽培にこだわるが、出汁にはカツオやマグロ節を用い、卵を使った料理が登場することもある。突き詰めるのは、質のいい野菜を純粋に美味しく味わってもらうこと。有機大豆の信州味噌、木樽熟成の醤油、天日干しの自然塩、きび砂糖などの厳選した食材も、その上で必要なだけなのである。
「野菜は身近な食材なので『家でも食べられるよね』と思われないことが大切。ひと手間、ふた手間かけることで、家庭では楽しめない料理を味わってほしい」
とうもろこしの芯と昆布で出汁をとるとうもろこし豆腐、手を変え品を変えた5品が登場する前菜盛り合わせ。自然派の日本酒や焼酎がまた、あの手この手で繰り広げられる野菜の滋味に、しっかりと寄り添ってくれる。 -
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Le Couple
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10人中10人に愛される味。それに限りなく近づく料理こそ佐々木清恭シェフが標榜するところ。「ジビエも大好きな食材だけど、最近は使う機会も少なくなってきた」と話すのも、好みがはっきりする食材が故のことである
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『北海道サンマのスモークと秋ナスのミルフィーユ仕立て』。サンマの旨みに野菜の甘味、酸味が寄り添う
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『本日の鮮魚のポワレ 秋のきの子の風味 マデラソース』には金目鯛。アイナメ、ハタなどを使うことも
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『牛タンのパネ・アングレーズ トマト風味』。野菜の旨みにマデラ酒の風味をほのかにきかせたソースで味わう
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パステルピンクを基調とした店内。シックな雰囲気をさけて、ゲストに緊張感を与えないようにと配慮した
シンプルでも研ぎ澄まされた味
万人に愛されるフレンチを追求佐々木清恭氏。千葉県のレストランを代表するトップシェフのひとりである。何といってもその経歴が華々しい。18歳でこの世界に入り、都内のグランメゾンで腕を磨くと、およそ2年を過ごしたフランスでは【ローベルガード】【ピエールガニェール】などの三ツ星店でさらなる研鑽を積み、帰国後は【ポール・ボキューズ トーキョー】の総料理長を務めた方だ。そんなシェフが今から17年前に、地元・柏に開いたのが【ル・クプール】。グランメゾン級の料理を楽しめながらも、肩肘張らず寛げる店を標榜としてきたレストランである。
「昔に勤めていたのはいわゆるグランメゾンばかりで、かしこまった店が多かった。そうではなく、自分の店を持つなら、万人に楽しんでもらえるフレンチにしたい。雰囲気も味も、気をてらうのではなく、出来るだけ多くの方に愛されるレストランが理想ですね」
名店で培った技術に裏打ちされる料理は、今時の華々しいものではない。ただ、味わえば重層的なソースの奥深さ、繊細な火入れ加減などが、美味しさとなって食べ手に訴えかけて来る。
「60歳を過ぎて、料理は余計にシンプルになってきた。けれどそれでいいんです。だって、ここは星を取り行く店ではありませんからね」
そう笑うシェフに一切の気負いはない。肩の力がほどよく抜けたシェフのように、ゲストもまた寛ぎ、美味を味わってほしい。それがシェフの本望なのだから。 -
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伊料理 zoe’s
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『カンパチのカルパッチョ 香味野菜のサラダ仕立て』。カンパチをレモングラスをきかせたオイルでマリネし、セルフィーユやマーシュなどの野菜と合わせた。パクチーを数枚加えることで、ほのかなエスニック感がアクセントに
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『燻製鮎と枝豆のピューレソースのスパゲッティ』。濃厚な鮎の出汁と枝豆がきいたソースが麺によく絡む
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ワインは、イタリアを中心にフランス、アメリカ、国産が揃い、赤、白、泡を含め約50種をオンリストする
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まだ24歳という若さながら、柏の人気イタリアンの厨房を任される河野隆馬氏。自ら料理をサーブすることも
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白を基調とした店内は、テーブル席がメインとなったつくり。畏まりすぎず、カジュアルすぎない雰囲気だ
トラットリアのように気軽に
しかし、料理はリストランテの美味メニューはランチ、ディナーともにコースのみ。運ばれてくる料理はどれもリストランテのそれであるが、その価格は「ここはトラットリア?」と思い違えるほどリーズナブル。たとえば、シェフのおまかせコース。アンティパストミストの後に前菜がもう一皿供され、プリモピアット、魚、肉のメインが続き、最後はドルチェで〆るのだが、この皿数にして価格は5700円。つまり、ひと皿の単価に換算すれば1000円未満でリストランテの味が楽しめるのである。もちろん、そこに一切の妥協はない。可能な限りの食材を仕入れ、イタリアンの技法を用いた料理で、目を舌を魅了する。カルパッチョには少しのパクチーを添えエスニック風に仕立てたり、あるいは焼きトウモロコシを使ったひと皿には、醤油をわずかにきかせたジュレを添えて和のテイストをプラスしたり。持ちうる食材とアイデアでコースを形づくるのである。
一方で、オープンキッチンとなったカウンターのある店内もリストランテらしからぬ親しみやすい雰囲気に。手が空いていれば、シェフ自らが料理をサーブすることも珍しくなく、肩肘張らずに楽しめる。柏に根付き、16年。この店の常連客は誰もがトラットリア感覚で通っていることだろう。だだし、そこに待っているのは歴としたリストランテの料理である。 -
※このページのデータは、2016年8月上旬取材時のものです。営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。