魚介自慢の 名店が熱い! | ヒトサラ
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Mar de Cristiano
- 『自家製バカリャウのオーブン焼き』。ポルトガル料理の定番である干しダラの塩漬けを自家製で。淡白なタラの身だが、塩漬けして干すことで、噛むごとに溢れ出すような複雑な旨みを湛えるようになる
- 昔からの製法を守る醸造所が多いポルトガルのワインは、土が香るような力強い味わいが主体
- いつも陽気な佐藤シェフだが、内に秘めた魚への情熱は強い。深い魚の知識を絶品の味へと転化
- 名物でもある自家製缶詰。保存食のイメージではなく、缶のなかで寝かせることで最高潮になるよう工夫されている
- 海を連想させる爽やかな内装が印象的。窓の外にはきらびやかに輝く西新宿のビル群を望む
ポルトガル料理を通して伝える
日本近海の魚の奥深い魅力日本ではいまだ馴染みの薄いポルトガル料理だが、代々木八幡に【クリスチアノ】が誕生したことで、その知名度が上昇傾向に転じたのは間違いないだろう。この店はそんな名店が手がけた、魚料理に特化した店。店主・佐藤幸二氏がこの店で目指したのはポルトガル料理の普及ではなく、魚食文化そのものの価値向上だ。
国の半分が海に面しているポルトガルでは、魚は日常食であり実にさまざまなバリエーションがある。塩焼きや干物など、日本食との共通点も多い。この遠くて近いポルトガル料理こそが、日本で魚の魅力を再発見してもらうために最適なツールというわけだ。
続いて佐藤氏が考えたのは価格。日常食にするなら、高級品であってはならない。そこで全国の漁協に足を運んで人脈を築き、海の状況を確認しながら毎日各地の漁港に連絡を入れる。そうして得た信頼により、店には毎日、市場を経由しない新鮮で安価な魚が届くのだ。
メニューには多彩なポルトガル料理が並ぶが「塩焼きで旨いと思って頂ければ、それが一番」と佐藤氏。誰より魚を愛する男が挑むのは、肉至上主義に偏りがちな現代日本の食文化なのである。 -
あこや
- 食感を最大限に活かすため、火入れ加減の見極めに余念がない伊藤氏。単純な料理だからこそ繊細な技術が重要となる。また和食出身だけあり出汁の取り方も一流。その違いを茶碗蒸しや出汁巻玉子にて是非とも味わっていただきたい
- 特製割り下で甘く煮込んだ貝肝を溶き卵にくぐらせていただく『肝のすき焼き』。残り汁をおじやにしても良い
- 具材が選べる『釜飯』。塩分控えめで濃厚な貝の旨みを堪能できる。最上級の魚沼コシヒカリ雪里米を使用
- 常時30種ほど取り揃えている地酒。そのほとんどが実際に酒蔵へ足を運び、貝料理に合わせて厳選したものである
- 酒蔵で使われた木槽の板やアンティークの吊り棚など、内装にはこだわりの品々が。器も骨董や陶芸家のものだ
無限の可能性を秘めた貝の旨みを
手を変え品を変え表現する網焼き特有の芳しい香りが、年輪を重ねた造り酒屋のような空間に満ちている。巨大な一枚板のカウンターの先に見えるのは、じゅわりとおいしそうな音を立てながら、今まさに焼き上がろうとしているサザエやアワビ。隣のまな板では、活きたままのカキが颯爽とさばかれていく。メニューを覗けば、焼き物や蒸し物をはじめ、ステーキ、飯物、肴まで、すべてが貝づくし。お通しから貝料理と、そのバリエーションの豊かさは圧巻だ。そう、ここは貝の扱いに特化した専門店なのである。
卓越した技術で膳を据える伊藤祐介氏は、元々和食の料理人だった。姉妹店【あぶさん】の味に惚れ込み6年ほど客として通い詰めた末、店のオーナーであり貝料理の第一人者でもある延田然圭氏に弟子入り。下地が出来上っていたこともあり3年の修業を経て新店【あこや】を任されることとなった。「何よりも食材の鮮度に自信があります。後はその魅力を丁寧に、そしてシンプルに引き出すだけ。それが難しくも楽しいですね」。
ホタテにはバター醤油、ホッキにはカツオの酒盗、大アサリには生海苔と、焼き物だけとっても味付けは多彩。食べ比べれば、それぞれの個性が巧みに引き出されていることがよく分かる。そして、実に酒が進む。タイラ貝とミル貝の肝をブレンドした特製味噌でつくるおにぎりや、アサリとハマグリの旨みを丹念に抽出した出汁でつくるリゾットなど、〆の一品まで飽きることがない。あこや貝の中できらめく真珠のように、ひとつひとつの貝が育んだ十貝十色、百貝百様の美味しさをご堪能あれ。 -
Bogamari Cucina Marinara
- 豊かな食材とシェフの技を同時に楽しめるオープンキッチンの眺めは壮観。イタリア各地の漁港にあるレストランの魅力を、日本ならではの形で見事に表現している。常時30種程度が揃う乾燥パスタや手打ち生パスタのサンプルにもご注目
- 平山シェフのスペシャリテ『うにのスパゲッティ ボガマリ風』。旬に合わせ日本各地の最高のウニを使う
- 『ホウボウの白ワインソース アーティチョーク』。アンチョビやレモンの風味で上質な白身魚をいただく
- 約300種のイタリア全土のワインが揃う。魚介料理との相性を考えワインは白が約7割。驚くほど選択肢は豊富だ
- 船のキャビンを彷彿とさせる優雅な空間。魚介から潮の香りが漂い、東京の中心部であることを忘れさせる
まるでイタリアの港町
目新しい朝採れ魚介が一堂にキッチン前のショーケースが、ここ【ボガマリ・クチーナ・マリナーラ】ではメニュー代わりだ。そこには神経〆された生ホッケ、まだ動いているスダレ貝やゾウリ海老など、珍しい魚介類がずらり。思わず感嘆の声がもれる。北は北海道、南は九州、約10箇所の漁港にて、その日の早朝に競り落とされた魚介が、夕方には店に並ぶ。「活きが良く、味が良く、築地でも手に入らない珍しいもの」を仕入れるため、全国各地へ足を運んで独自のルートを築いたという。どのような品種で、どんな調理が合うか、説明を聞くだけで胸が踊る。まるで魚河岸。いや、ここまで珍しい魚介が揃うのは、漁港でもお目にかかったことがないだろう。
好みの食材が決まったら、次は調理法を考える時間。イタリア料理に詳しければ要望をそのまま伝えれば良いし、そうでなければスタッフがオススメを一から説明してくれる。「西欧から訪れるお客さまも多く、かなり複雑な注文をいただくこともあります。料理人魂に火がつきますね」と語るのは平山貴之シェフ。海岸沿いの街を中心とした、イタリア全土の郷土料理に造詣が深い。そして、ただ本場の味を再現するだけではない。出汁ひとつとっても肉由来のものを一切使用せず、魚介の個性を活かすのだ。
例えば、コクを出すために『うにのスパゲッティ ボガマリ風 』に使用するのは、イタリア産のマグロのカラスミ。得も言えぬ複雑なパスタソースの旨みに、春先ならば最高のバフンウニが絡みつく。素晴らしい味わいだ。漁師からシェフに渡り、今まさに口へ運ばれた、そんな魚介をめぐる一連のストーリーに思いを馳せつつ、さらに食の喜びは深まっていく……。 -
Osteria da K[Kappa]
- 『アクアパッツァ』で使用する魚は日替わり。その日直送された魚のなかから、目で見てチョイスできる。キンメやノドグロといった人気の魚はすぐに売り切れてしまうので、早めに注文を。写真はホウボウ
- なるべく客席に目が届くように、とオープンキッチンのカウンターにこだわった
- 「料理人として一流の食材を調理できることが喜び」と礒貝シェフ。調理法の研究にも余念がない
- ワインはイタリア産のみで70~80種。ソムリエが魚介に合う赤などもセレクトしれくれる
- 『生雲丹と生海苔の冷製バベッティーニ』。濃厚な雲丹の旨みが際立つシェフのスペシャリテ
三ツ星鮨店に負けぬ特上魚介を
シンプルなイタリアンに突然だが【鮨よしたけ】をご存知だろうか。2005年に六本木にオープンし、2010年の銀座移転からわずか数年でミシュラン三ツ星を獲得。以後、業界のトップを走り続ける名店中の名店だ。そしてここ【オステリア ダ カッパ】は、その名店が経営するイタリアンなのだ。
なにも薀蓄を伝えたいわけではない。それが意味することはつまり、この小さなオステリアに、日本を代表する鮨屋と同様の魚が届くということ。パスタに添えられる雲丹は甘み濃厚な一級品、アクアパッツァにはノドグロやキンメといった高級魚も登場、プッタネスカに潜むのはなんと大間の本マグロだ。「魚介が旨いイタリアン」と評判が立つのも、当然の流れだろう。
厨房を任されたのは、礒貝勝成シェフ。イタリアン一筋の実力派だが、縁あって【鮨よしたけ】の板場に一年間立ったこともある。積み重ねたイタリアンの技と、目近で見て吸収した江戸前鮨の技、そして上質な魚を見分ける目。シェフの力は、今まで以上の深みを得る。さらにそこに最高の魚介という強い武器が加わり、この店の味は食通をも唸らせる高みへと昇華されたのだ。 -
ROZZO SICILIA
- シチリアで受け継がれるオリジナルを大切にしつつ、そこに現代的な解釈と日本の魚介の魅力を加えて再構築するのが中村シェフの真骨頂。一品ごとにしっかりインパクトがありながら、長く余韻を残す滋味も併せ持っている
- 『まぐろのオリーブオイル漬け 新タマネギ 粒マスタードのサラダ』もシチリアの定番料理
- カジュアルな雰囲気のなか、気軽なアラカルトで本格的なリストランテの味が楽しめるのが魅力
- 『シチリア風魚介のクスクス』。海老、イカ、白身魚などの魚介出汁を吸ったクスクスは濃厚な旨さ
- ラムやジンにさまざまなフルーツを漬け込んだ自家製の食後酒も。度数が強いのでご注意を
東京に集まる豊富な食材で
シチリアの味をそのまま再現近代以前にギリシア、ローマ、アラブなどさまざまな国に支配されてきたシチリア。さらに島という地理的要因が加わり、独特な食文化が育まれてきた。その最大の特徴は、たっぷりの魚介と野菜を使うシンプルな料理。ここ【ロッツォ シチリア】ではそんな本場さながらの、ロッツォ(=飾り気のない)なシチリア料理が舌を楽しませてくれる。
中村嘉倫シェフは22歳でイタリアンの世界に入り、日本でじっくりとシチリア料理を学んでからシチリア島へ渡った。そこでの第一印象は「日本とあまり変わらない」。もちろん本場ならではの魅力はあるが、あらゆる食材や調味料が手に入る日本、とりわけ東京でも、変わらぬ味がつくれるのではないか、と。そして3年間の修業後に帰国し、修行時代からの旧知である阿部努氏とともに開いたのがこの店だ。
シェフが「現地にあってもおかしくない店」と標榜する通り、ケッパー、オリーブ、アンチョビなどはイタリアから輸入。イタリア野菜やフルーツ、もちろん魚介だって、本場になんら遜色はない。日本の食材が、本場そのままのシチリア料理に変わる。その魔法のような手際に、誰もが目を奪われるはずだ。
※このページのデータは、2016年3月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。