これぞ今の浪速グルメ | ヒトサラ
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浪速割烹 喜川
- 1階カウンター席は上野修氏の仕事が間近で楽しめる特等席。カウンターに腰を下ろすと厨房の隅々までが見渡せるつくりになっており、カウンター割烹の醍醐味が存分に楽しめる
- 『煮物 鱧出汁コンソメ風 焼目鱧・湯葉包み車海老 あしらいディル』。夏にかけて関西で人気の鱧を使った一品
- 『創菜 千枚鮑の生姜あんと肝だれ 野生くれそんのチョイソテー 白髪葱 輪切りラディッシュ』
- 「地に足の着いた大阪らしい味を追求しています。浪速の旬を楽しんでください」と主人の上野修氏
- 今年で50年目の節目を迎える浪速割烹の老舗。風情ある法善寺横丁の一角にのれんを構える
浪速割烹 喜川
予約専用番号:050-5263-2381 お問い合わせ専用番号:06-6211-3030 住所:大阪府大阪市中央区道頓堀1-7-7
営業:11:30~14:00/17:00~21:30
休日:月曜 お店の詳細情報を見る“始末の心”を大切に
割烹の神髄を伝える老舗「うちは、京料理とよく比較されますが、京都が利尻昆布をよく使うのに対して、浪速は真昆布を使います。文化や料理の違いはいろいろありますが、実は大切なのはそこではないんやと思います」と浪速割烹を標榜する名店【喜川】の主人・上野修氏は教えてくれる。
大切なのは、始末の心。食材ひとつをとっても、最初から最後まで大切にする。鯛であれば、身を焼き、かぶとはあら炊き、骨は出汁に、ウロコは唐揚げ。旬の味を余すところ無く楽しませる。それこそが開業より50年、多くの人に支持されてきた【喜川】で受け継がれる精神なのだ。結果、それはとても合理的であり、さまざまな味で多くの美食家の舌を満足させてきた。
さらに2代目・上野氏はフレンチ出身という自らのルーツを活かし、浪速割烹に新たな息吹を加える。お造りでは、赤貝や明石のタコにバジル酢味噌を、マコガレイには、香草ドレッシングを添える。鱧の煮物であれば、ハーブのディルをさりげなく飾る。そのひと工夫が日本酒を呼び、さらにはワインとの調和も生む。
「何が一番旨いか、それが一番大切。技法や食材は和食だけにこだわる必要はないと思ってます」
天下の台所・大阪を代表する、浪速割烹の老舗。今なお受け継がれる“始末の心”はさらなる進化を遂げて、人々の胃袋を満たし続けている。 -
常夜燈 豊崎本家
- 「とびきり美味しぃしたら飽きられる。お金はろて出たときに初めて、『あぁ美味しかったなぁ』と思てもらうのがえぇと習いましたが、未だにできまへん」と池永氏
- 海老しんじょうのようなえび天も、鱧のすり身が濃いす巻きも、練り物ひとつから全てイチからの手仕込み
- 「ダシがしゅんでる(染みている)なぁ」と実感できる具材の代表が、丹後の農家から仕入れる大根などの野菜
- おでんダシで炊いたご飯にさらにダシをかけてサラサラいける『ちゃめし』。海苔とゴマをたっぷりで
- 今では高級食材となった明石の蛸が安定して仕入れられるのも、長く大阪の味を支えてきた信頼の証だ
常夜燈 豊崎本家
06-6371-1115 住所:大阪府大阪市北区豊崎2-8-14 池永ビル1F
営業:11:30~13:30/18:00~21:30
休日:日曜・祝日(土曜の昼) お店の詳細情報を見る何料理か?という解は、
歴史と評価が決めていくいわゆる「おでん」のことを関西では「かんとだき(関東炊き)」と、特に年配の世代はそう呼ぶ。これは今で言うB級グルメの感覚で、駄菓子屋や海の家で出される料理というイメージだ。
昭和20年11月、【常夜燈】の創業は、終戦後わずか4カ月後のことだった。創業者である先代に、消沈した界隈の雰囲気を「どうにかできないか?」と、ご近所のお初天神の宮司から相談があったという。庭師だった先代のコネクションを駆使し、市場の関係者などを集めて境内で始めた店がそのルーツ。自身も奥様お手製の手巻き寿司を携えて出店に立った。物資のない頃ではあったが、なんとかかき集めて振る舞った巻き寿司は大好評だったそうだ。後におでんも品書きに加わり、勤めていた電電公社では「あんまり稼ぎもよぉなかったから」と、二代目の池永伸氏も店に立ち始め、今に至るわけだが、鯛の頭や羅臼昆布に白味噌を加えた贅沢なダシ、その上に並べる丁寧に仕込んだ具材はいつしかB級グルメの域を完全に超えていく。
「かんとだきではありません、かんさいだき(関西煮)です」
この言葉を贈ったのは、逸品ぞろいの味を知った昭和を代表する名優、森繁久彌氏だった。他にもご贔屓筋には大物の美食家や健啖家が多い。
庶民の味ではあるが、唯一無二の特別な味。長い歴史と、ともに向き合い、寄り添ってきた客筋が店の格を決めていく。そのお手本のような一軒である。 -
Ristorante QUINTOCANTO
- 白を基調にした店内は、ガラスを効果的に配置することで、どの席に座っても周囲の緑を感じられる空間に。昼は開放的なリストランテ、夜はドラマティックと、表情も一変する
- 5品出る前菜のうちの、ひと皿。『ウイキョウ オレンジ エビ』。春を感じる爽やかな味に
- 『ドルチェ チョコレート ピスタチオ バナナ』。相性抜群のバナナとピスタチオの組み合せにチョコエクレアを
- 鴨のリピエノを詰め物にしたアニョロッティ。ポルチーニや洋梨を使い重層的な味わいに
- 【シェ・イノ】やフランスで経験を重ねSALONEグループに入店。若き感性を発揮する弓削啓太シェフ
リストランテ クイントカント
06-6479-1811 住所:大阪府大阪市北区中之島3-6-32 ダイビル本館1F
営業:12:00~L.O.13:00/18:00~L.O.20:00
休日:日曜、第1・3月曜 お店の詳細情報を見るイタリアンの名店が
大阪へ進出し、大躍進イタリア料理のトラディショナーレ(伝統)とレッジョーナーレ(地域性)を踏まえ、再構築させたイタリア料理=クチーナ・クレアティーヴァを提案する。そう聞いてしまうと、少し身構えてしまうし、一体どんな料理が味わえるのか想像すらできない。たぶん、それでいいのだ。この店を訪れるゲストは、まっさらな気持ちでその美味なる味を享受するのみ。
大阪に誕生し、瞬く間に予約の取れない人気店へと駆け上がった【Ristorante QUINTOCANTO】は、訪れるたび、常に、驚きと感動に出合える店だ。実は同店、神奈川県横浜市で数々の伝説を残し、昨年12月の移転後もさらなる進化とともに予約困難店であり続ける【SALONE 2007】の姉妹店。同店同様に、月替りのコースのみを提供し、基本的には二度と同じ料理はつくらないのがモットーだ。
そんな中、例外的にコースのスターターとして季節を問わず供されるのが『フォアグラのウエハース』だ。店のコンセプトを端的に表すこのひと皿、ウエハースの間にフォアグラとレモンのジャムであるマルメラータを挟み、傍らにはビーツと雉の出汁を丁寧に抽出した温かいスープが添えられる。
「フォアグラのコクに、レモンの酸味がすっと寄り添い、追いかけるようにビーツと雉の野趣あふれる香りが溶け合います。イタリアの伝統的な食材の組み合わせに、冷温の掛け算を意識しました」とは弓削啓太シェフ。
見た目は斬新。味わうと次々と顔を出す食材の滋味。さらに合わせるワインで、また違った魅力を覗かせる。そんな驚きをひと皿ひと皿で楽しむ時間は、まさに同店ならではの醍醐味なのだ。 -
Chi - Fu
- 様々な「豆」をテーマに、観覧車のような飾り棚に盛り込んだ前菜の盛り合わせ。取り分けは慎重に
- 中国の発酵豆トウチや湯葉、生麩を使い、野菜で北京ダックの精進料理版をつくりあげた一皿の名は『新緑』
- 山の幸である猪の肉と、海の幸であるヒラメを梅と海苔を使ったソースで仕立てると、名前は『カオス』に
- 「食材や調理法によって、一皿ごとにテーマと名前を決めています」と少年のように明るく説明してくれる東氏
- キッチンには中華包丁とペティナイフが共存している。大型のスチコンなど、最新機器も完備している
シーフ
予約専用番号:050-5263-2379 お問い合わせ専用番号:06-6940-0317 住所:大阪府大阪市北区西天満4-4-8 1F
営業:11:30~L.O.13:30/17:30~L.O.20:30
休日:日曜、月曜のランチ お店の詳細情報を見る「守破離」の理で、
中国料理を新たな高みへ導くフランス料理か? はたまた和食か? いったい何料理なのか? そんな風に評されることも少なくない西天満の【Chi-Fu】だが、店主の東浩司氏に言わせれば即答で「中国料理です」なのである。うぐいす色の野菜を美しく盛りつけた『新緑』という一皿などは、ルックスはフレンチ、湯葉や生麩といった食材は和食を連想する。だが甜麺醤とフキノトウの味噌を包んで口に入れると、それは紛れもない中国料理だ。ときにフレンチや和食の技法を使いはするが、決して中国料理の範疇を踏み外さない。
スタッフにソムリエを多く抱え、ワインも欠かせない存在だ。だがセラーに眠る3000本余のワインも、あくまで「料理ありき。料理に寄り添う存在」だ。
「消去法で中国料理、で良いんです」と東氏は屈託なく笑う。壮大な中国料理の体系を理解しているからこそ、利用客の知識と想像を遥かに超えた料理を提供することができる。だから我々はこの店で、戸惑い、驚き、そして感動する。
茶道の「守破離」のように常に心はパイオニア、自らのルーツである中国料理を、新たな段階に導くこと。それが目標だ。
我々は「雉と昆布の蒸しスープ」が、和食ではなく中国の宮廷で古くから愛されている料理だなんて、知らなくてもいい。することはただひとつ。料理の美味さに素直に喜び、器や設え、何でも良い「楽しかった」という記憶を残す。それだけでいいのだ。 -
point(ポワン)
- グリーンオリーブとベーコンのケークサクレ、中谷トマトのスープにウニ、フォアグラなど、アミューズは食材の宝庫
- 上等な貝、ウスイエンドウのさやを煮出したダシ、豆のピューレ。『ウスイエンドウと豆と貝』という名が全て
- 国産無農薬レモンを丸ごとシロップで炊いて「酸甘苦」余すところなくレモンの味を使うレモンのタルト
- 入店して即【ポワン】の中枢。自らが座る席よりもまず目に入る、広く遮蔽物もないオープンキッチン
- 大学を出るまでは「フランス料理なんて食べたこともなかった」と笑う中多氏
ポワン
06-6455-5572 住所:大阪府大阪市福島区福島3-12-20 1F
営業:12:00~L.O.13:00/18:00~L.O.20:00
休日:月曜、火曜ランチ、月に一度日曜休このお店は閉店しました
NOレシピ、NOスペシャリテの
異彩フレンチが光り輝く大阪は福島。JR大阪駅からわずか一駅、いなたい町並みの一角、路面店というにはほんの少し奥まったところに【ポワン】はある。下町風情の中に、ちょっと覗きたくなる造り、シンプルかつ瀟洒な店構え、その真っ白な姿はよく目立っている。
格のある料理店なら、洋の東西を問わずスペシャリテ全盛のこの時代に、オーナーシェフの中多健二氏は、驚くことに「スペシャリテどころか、レシピもないんですよ(笑)」という。例えば、「フォアグラ1kgに対して13gの塩」という基本的な決まりはあるが、後は全て感覚。とは言え突飛な料理ではなくフレンチトラッドであり、引き出した素材の味を決して壊さない。いやむしろそれだけを大切にする。
例えば、『桜エビとホワイトアスパラガスのヴルーテ』などは、素材の他は塩コショウとバターだけ。皮を剥いて煮出したアスパラのダシに、刻んだ身を多めのバターで炒めてコクを出し、軽くソテーしたエビは100%、いや120%「アスパラとエビの味」なのだ。スタッフたちにも、レシピではなく今の自分の舌と感覚を信じるように指導する。そのためには「一にもニにも味見」である。
「どや! という料理を出していた時期もありますが、ビックリする料理はお客様を疲れさせるな、と」。
そう思う中多氏の、「この料理の素材は何だ」という、味を探さなくても良い料理は、素材への、そして利用者への愛なのだろう。
※このページのデータは、2015年4月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。