ハレの日に 訪れたい、 和の名店へ | ヒトサラ
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寿修
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正統派の関西割烹スタイルを貫く職人・先崎真朗氏。大阪から取り寄せる調味料や角のない関西風出汁を基本に仕立てる料理は、まろやかでありながら芯の通った重厚なおいしさ。氏の故郷である九州の食材たちも強い印象を残す
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先崎氏のこだわりを凝縮した煮物椀。この日は松葉蟹の真薯と聖護院大根、めかぶなどを蕪のみぞれ仕立てで
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この日の先付けは毛蟹とウニの土佐酢和え。陶器、磁器、ガラスなど、使い分ける器も目を楽しませてくれる
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職人の魂が宿る包丁。丁寧に研がれて静かな輝きを放つ様子は、先崎氏の職人としての矜持を象徴するかのよう
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職人の技を眼前に眺めるカウンターは割烹の特等席。ゲストと職人の心理的な距離が近いのも、関西割烹の魅力
寿修
予約専用番号:050-5263-0776
お問い合わせ専用番号:03-6427-5167 住所:東京都港区西麻布2-16-1 斎田ビル1F
営業:18:00~翌1:00(L.O.23:00)
休日:日曜・祝日 お店の詳細情報を見る住宅街の小さな店で堪能する
関西風日本料理の真髄根津美術館の交差点を西麻布方面へ進み5分ほど。閑静な住宅街の一角にある数寄屋風の店が、日本料理【寿修】だ。このロケーションや佇まいにやや身構えてしまうかもしれないが、扉の向こうに広がるのはカウンターを主体にした格式張らない空間。店主・先崎真朗氏も、いたって自然体でゲストを出迎えてくれる。
料理はお任せコース1本のみ。先付けから椀、お造り、揚げ物、煮物と続く伝統的な懐石だが、あえて外した料理を織り交ぜ緩急をつけるのも先崎氏の手腕。唐津のクエや佐賀牛など、氏の出身地である九州や修業を積んだ関西の厳選素材も料理に奥行きを加えている。もちろん柔軟な展開であっても、関西割烹の流れを汲んだ穏やかな味わいはどの料理にも一貫。昆布勝ちの出汁やそのまま飲めるほどマイルドな酢など、角のない穏やかな旨みが存分に舌を楽しませてくれる。
ちなみに店名の【寿修】とは、「人生の長短に関わらず、日々を懸命に生きること」を良しとする孟子の言葉。高まる名声に驕ることなく、さらなる美味を追求する先崎氏の姿勢はこの言葉に集約されている。 -
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小熊
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食材が持つ本来の滋味を大切にし、調理する主人の小岩浩高氏。「最後に調味料を打って仕上げるのでなく、出汁の段階である程度の美味しさに持っていくのが私の流儀」。新橋の老舗京料理店や都内懐石料理店などで研鑽を積んだ気鋭の料理人だ
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『伊勢海老の具足煮』。酒煎りして炊いた身はブリンブリンの食感。薄葛の餡には海老味噌で、渾然一体となって旨い
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『白川の造り』。白川は驚くほどの旨みがあり、脂も上品。甘酸っぱい竜皮昆布と幾層にもなっており、一緒に食す
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『鯨のコロの白味噌仕立て』。コロは皮でコラーゲンもたっぷり。生を2日かけてアク抜きし、トロトロに炊き上げた
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人間国宝が手がけた備前や唐津、カンボジア人作家、イム・サエム氏の南蛮手など、希少な一点物も店内に飾られる
小熊
予約専用番号:050-5263-0774
お問い合わせ専用番号:03-5537-7444 住所:東京都中央区銀座5-5-13坂口ビル3F
営業:17:30~L.O.21:00
休日:日曜、祝日、第1・3・5土曜食材の旨みを徹底して活かした、
真っ当な味わいに和食の粋を実感器は人間国宝が手がけた一点物や、骨董品としての価値もある年代物がズラリ。食材も、他店ではめったにお目にかかれない逸材が揃う。昨年6月オープンの【小熊】は、すでに食通の間でも評判の日本料理店だ。腕を揮う主人の小岩浩高氏は言う。「料理は素材がすべて。やり過ぎないことが最も大切だと思っています。その分、ごまかしのきかない仕事をしなければなりません」
なかでも熟成は、【小熊】が得意とする仕事のひとつ。魚種に応じて冷蔵で寝かせる期間を見計らい、各々の旨みを最大限に引き出している。「今日の白川(白甘鯛)は3.8kgの大物。これで19日、寝かせています」。脂の上品な甘さは唸るほど。熟成させて初めて醸せる旨みもあるという。熟成は魚に限らず、肉も同様に実行。驚くべきは米も寝かせているという点で、研いだ後で冬なら一週間ほど、低温で寝かせている。「そうすることで、お米の粒立ちが良くなり、甘みも増してくる」
なぜ、その仕事が必要か。ただ漫然とセオリーを踏襲するのでなく小岩氏は成果を見据えた上で仕事を施しているのだ。それこそが食材の持ち味を丁寧に引き出し、そのものの繊細な旨みを楽しむ、日本料理の粋。
「今回は正月に相応しい料理をご用意しました」。器やあしらいで季節を愛で、口に運んで今、この素材を食す必然性を実感する。日本人としての誇りまで甦る。 -
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日本料理 TAKEMOTO
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カウンターに舞台を移した現在でも、名料亭で鍛えた武本氏の技は健在。流れるように無駄のない所作で料理を仕立てつつゲストに気を配り、ときに会話に花を咲かせる。その総合力こそが、この店が名店と呼ばれる所以だ
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コースの〆には、炊き込みご飯が登場することが多い。写真のウニのほか、牡蠣、筍、松茸など旬素材で仕立てる
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鱈の白子と百合根の玉地蒸し。柔らか目の茶碗蒸しといった印象。上質な出汁の風味が全体をまとめあげている
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趣味を兼ねて集めたという酒器や食器。陶器、磁器、塗り物など幅広いが、とくに土の力強さが感じられる器が多い
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店はカウンターメインの設え。「付かず離れず、ゲストに応じて」をモットーとする武本氏の接客も心地よい
日本料理 TAKEMOTO
予約専用番号:050-5263-0775
お問い合わせ専用番号:03-3780-6272 住所:東京都渋谷区鶯谷町8-10 代官山トゥエルブII 1-A
営業:12:00~13:30(要予約)/18:00~23:00(最終入店22:00)
休日:不定休 お店の詳細情報を見る名店仕込みの熟練の技が
カウンターを舞台に輝きを放つ日本を代表する名店【金田中】で修業を重ね、向島の料亭【水野】では料理長も務めた武本賢太郎氏が、独立後に選んだ舞台はカウンター。「お客様の声を直接聞きながら、味だけに留まらない満足を提供したい」そんな思いが、自身の名を冠した【日本料理TAKEMOTO】に凝縮されている。箸の進み具合に合わせた料理提供、合わせる酒との調和、そしてさりげない会話。カウンターならではのライブ感が、和の趣のなかに穏やかな雰囲気を加えているのだ。
そんな心地よい空間ではあるが、料理は伝統に則った正統派。とくに日本料理の要である出汁は、武本氏の実力を如実に表している。基本は最上級の鰹と昆布を基本にしつつ、合わせる食材に応じてまぐろ節、宗太鰹、日本酒などを加えて微調整。絶妙な塩梅で使い分ける出汁が、四季折々の旬魚をはじめとした食材をいっそう引き立てている。厳選した旬食材と、その根底を支える出汁。その堅実な組み合わせが、一見地味な見た目のなかに奥深い旨みを潜ませるのだ。
名店仕込みの技と最高の食材が織りなす正統派日本料理を、気軽なカウンターで堪能する。そんな贅沢が許される、稀有な一軒である。 -
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うぶか
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おまかせコースに必ず登場するのが海老や蟹の刺身で、この日は『車海老の刺身 自家製ポン酢』が供された。加藤氏に「海老の中で一番おいしいと」と言わしめる知多半島産の車海老は、旨みと甘み、食感のバランスが素晴らしい
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『タラバ蟹と聖護院大根のみぞれ仕立て』。出汁におろしと角切りを加え、蒸し上げた蟹身を惜しげもなく盛る
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飯物から『ズワイ蟹と慈姑の炊き込みご飯』。旬の海老や蟹に、季節の野菜を合わせて、土鍋で炊き上げる
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食材は漁師から直接仕入れるほか、築地へと毎朝足を運び全国各地の旬の海老や蟹を厳選している
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「万人受けする店ではありません」と笑う加藤氏だが、今では荒木町を代表する人気店のひとつとなった
甲殻類尽くしの料理に
店主の愛が降り積もる甲殻類専門の日本料理店【うぶか】。そんなちょっと変わった店を立ち上げたのは、他でもない、店主・加藤邦彦氏が無類の蟹好きだからである。料理人としてのキャリアを【かに道楽】からスタートさせたのも、実は「まかないで好きなだけ蟹が食べられると思って」という至って簡潔な理由から。おまかせコースの定番である海老フライも、毎日のように夢に出てきたという理想の味を具現化したものだと加藤氏は笑う。
「海老フライって、ほとんどが海老の一番美味しいミソの部分が使われていないですよね? 海老の身がプリッと弾けて、中からミソがジュワッと出てきたらどれほど美味しいだろうなと思って」
が、夢では簡単にできた理想の海老フライもいざつくるとなかなかうまくはいかない。海老ミソをアメリケーヌソース風に仕立て、春巻きの皮に包んで揚げるという現在のスタイルも、半年以上かけて試行錯誤を繰り返し、辿り着いた結果。そう加藤氏を突き動かしてきたのは、いつだって甲殻類への一途な愛なのだ。
ただ、その基本にあるのは「いかにいい素材を使い、その旨さを引き出すか」という日本料理の真髄にある。築地での毎朝の仕入れ、産直で届く厳選した蟹や海老を使い、そこに落とし込む京都の料亭仕込みの技。これほどの愛情が注がれるなら、海老や蟹も本望だろう。 -
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いちかわ
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決して口数の多くない店主の市川氏だが、それも鮨職人の仕事に徹底的にこだわるがゆえの矜持。毎朝、5時に築地へと仕入れに向かい食材を厳選。【いちかわ】を特徴づける一品料理にも京都の老舗料亭で磨いた腕前を見事に落とし込む
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この日だされた『中トロ』は青森の三厩産の本マグロ。おまかせでは大トロや漬けなど5~6種類のマグロが登場する
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五島列島の『クエ』は、醤油を薄く塗り供される。穏やかなクエの旨みと赤酢のシャリが一体となり口の中に幸せを運ぶ
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おまかせの半分弱を占めるというのがマグロ。修業時代から付き合いのある、築地の仲買いから仕入れる
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カウンターのみの店内。ゆっくり鮨を楽しんでほしいと、後席の予約を取らないのが市川氏のこだわりでもある
いちかわ
03-3705-2266 住所:東京都港区南麻布2-10-13-OJハウス 101
※2017年7月より、上野毛から移転しました
営業:12:00~(日曜のみ)、18:00~22:30(L.O.20:30)
休日:水曜 お店の詳細情報を見る住宅街で燦然と輝きを放つ
江戸前の鮨と名店仕込みの料理上野毛駅から歩いて10分ほどの世田谷の住宅街の一角。用賀中町通り沿いといって、ピンと来る人も多いかも知れない。【いちかわ】が店を構えるのはそう、かつてあの某有名鮨店があった場所である。飲食店としては決して恵まれていない立地、しかも有名店の跡地となればハードルは高い。それでも店主・市川克海氏があえてこの地を選んだのは、ある種の挑戦でもあった。
「独立を考えここが候補地に挙がった時、師に言われたのが『おまえはあそこでは成功できない』という言葉でした。技術云々ではなく、人見知りでお客さんとの会話も少ない自分の性格が見透かされたんでしょうね」
が、それが逆に市川氏の心に火を付けた。駅から遠い、店のホームページはない、必要以上の話をしない。「ここで純粋に“味”だけで勝負できたら、どこでもやっていける」と市川氏は考えたという。
蓋を開けてみれば、店は2012年のオープンから一年経たずしてミシュランの一ツ星を獲得。おまかせコースでは、京都の老舗料亭で7年の修業経験を持つ市川氏の“料理”もまたこの店が数多の食通を唸らせる所以でもある。伝統的な江戸前の仕事と職人の矜恃を落とし込んだ鮨、絶妙なタイミングで供される料亭仕込みの一品料理。一ツ星のその実力は、推して知るべしである。 -
※このページのデータは、2014年12月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。