1. ヒトサラ

あのおいしそうな一杯が!? 作中の「ラーメン」が実際に食べられるマンガ3選

――ラーメン。中華料理の枠を飛び越え、今や日本の大衆食の代表的な料理に数えられる麺類ですよね。数多くのレパートリーを生み出した日本独自の進化には、目を見張るものがあります。
そこで今回は、ラーメンが登場するマンガを3つセレクト。しかも、現実でも作中のラーメンが実在して、実際に食べられる作品に厳選しました!
ラーメンをハフハフとすするマンガの登場人物たちに気持ちを重ね合わせるほどに、どうしても同じラーメンを食べてみたくなるもの。このコラムを読み終わった頃には、作中のキャラたちが舌鼓を打っていた一杯を食べに駆け出しているかも…!?

『ラーメン大好き小泉さん』

『ラーメン大好き小泉さん』

作品データ/『ラーメン大好き小泉さん』(1巻より抜粋)-作者:鳴見なる 『まんがライフSTORIA´』連載中、既刊7巻(2019年1月現在) 鳴見なる/竹書房

 この作品はあえて乱暴に言うなら、クールでミステリアスな美少女女子高生・小泉さんが、毎回ひたすらラーメンを食べるだけのマンガ…!
ラーメンと小泉さんを軸にストーリーが進んでいきますが、基本はおいしそうにラーメンをすする小泉さんを鑑賞し、小泉さんが選んだラーメンの魅力を存分に堪能するためのマンガなのです。

実在する有名チェーン店がモデルのラーメンが多数登場!

『ラーメン大好き小泉さん』

 この『ラーメン大好き小泉さん』という作品、主人公である小泉さんや、小泉さんのことが気になってしょうがない同級生の大澤さんを中心とした、女子高生たちが織り成すほっこり日常系マンガのテイストもあるのですが、最大の特徴はそこではないのです。
そう、最大の特徴は、本作に登場するラーメンが、この現実世界に実在すること…! はっきりと店名は出さないものの、ラーメンのビジュアルや店舗外観・内観のビジュアルをほぼ完全再現しており、明確にモデルにしているラーメン店が存在しているんですよね。
例えば、第1話「ヤサイマシニンニクアブラカラメ」で小泉さんらが食べるのは、あの最強ガッツリ系ラーメンがモデル。そう、麺が見えないほど山盛りのモヤシとキャベツ、ダイナミックに切り落とされた「ぶた」(チャーシュー)、力強い食感のある太い麺で、ガッツリ系の代名詞ともなっているあのお店です!!
ちなみに第1話タイトルにある、複雑な呪文のような注文方法も醍醐味ですが、小泉さんはまさに「ヤサイマシニンニクアブラカラメ」の呪文を唱えていた模様…。
その他にも、第3話「こってり」では『天下一品』、第5話「北極」では『蒙古タンメン中本』、第8話「味集中カウンター」では『一蘭』といった具合に、ラーメンファンならば誰もが知っている有名チェーン店が続々と登場するんですよ。
日本には多種多様なラーメンが存在しますが、本作では全国各地のラーメンを網羅する勢いで紹介されていきますので、必ず自分好みのラーメンが見つかることでしょう!

ラーメン好き女子に“一人ラーメン”の勇気を与えてくれる

『ラーメン大好き小泉さん』

 さて、ここからは本作の別の見どころにもフィーチャーしていきましょう。
まず、美少女・小泉さんが、臆することなくラーメンを前に臨戦態勢に入り、「がふ」「ずるっずるずるずるっ」「がっがっ」「ずずず」「ごっくん」といった豪快な擬声語とともに、ラーメンに立ち向かっていく様は……爽快!
もちろんその特徴がリアルに再現された、モデルとなっている店のラーメンのこだわりや味や食べ応えの解説があり、そのうえで一心不乱に食す小泉さんの姿が描写されるため、食欲をそそられることは間違いありません。ですが、食欲をそそられるという次元とは別に、美少女とラーメンというギャップに間違いのない爽快さもあるのです。
しかし、このコラムでそれ以上に伝えたいのは、本作がラーメン好き女性に与えた影響! 本作がラーメン好き女性に与えた勇気の大きさを、ぜひとも称えたい…!!
最近はだいぶ入りやすい店舗が増えてきましたが、やはりラーメン業界全体を見ると、ラーメン店の客層は男性がまだまだ圧倒的に多いでしょう。ラーメンが好きでラーメン店に入りたい気持ちはあっても、もう一歩の勇気が出ずに足を踏み入れられないという女性も少なくないはず。
けれど、本作の主人公である小泉さんをご覧ください。女子高生がたった一人でも、何の迷いもなく男性だらけのラーメン店の行列に並ぶし、通されたカウンター席でなんの恥じらいもなく、本能の赴くままにラーメンをかっ喰らうのです。
そう、その小泉さんの雄姿を見て、自分も一人でラーメン店に行ってみようかなという勇気が湧いた女性もいることでしょう! ラーメンが好きだけど、今まではなかなかラーメン店に行くことができなかったという女性にこそ、本作を読んで小泉さんからたくさんの勇気をもらってもいただきたいものです。

『君の名は』

『君の名は』

作品データ/『君の名は。』(2巻より抜粋)-原作:新海誠 作画:琴音らんまる 『月刊コミックアライブ』連載、全3巻 新海誠・琴音らんまる・2016「君の名は。」製作委員会/KADOKAWA・メディアファクトリー

 2016年に公開されて大ヒットした映画『君の名は。』のコミカライズで、ストーリーは映画版を踏襲しているので、映画版を観た方には説明不要でしょう。
本作は男主人公・瀧と女主人公・三葉の心と体が入れ替わり、瀧と三葉がぶつかり合いながら(痴話ゲンカしながら)も、仲を深めていきます。1000年に一度来訪するという彗星が地球に迫り、その彗星が物語に大きく関わってくるというファンタスティック・ラブストーリーです。

三葉探しの旅の途中、瀧たちが漏れなく頼んだご当地麺

『君の名は』

 見知らぬ者同士だった東京育ちの瀧と田舎町育ちの三葉。二人のライフスタイルのギャップも見どころのひとつでしたが、物語中盤で瀧は、三葉が住む岐阜県の飛騨高山エリアを目指します。そんな瀧一行が休憩がてらに入ったのが、高山らーめんのお店でした。
「すいません 高山らーめんひとつ」、「俺も高山らーめん」、「じゃ俺も高山らーめんで」と、結局3人とも高山らーめんを注文するというシーン。
この高山らーめんのシーンは、物語の空気感的にはちょっと重め。そんなシリアスパートで登場したラーメンだったため、読者・視聴者をほっこりさせ、空腹感を刺激したのでしょうね。
正直、高山らーめん自体は物語の本筋には関係ありませんし、高山らーめんが出て来るのは映画版でもマンガ版でもほんのわずか…………なのですが! なぜか、読者・視聴者の心にインパクトを残しているのです。

高山らーめんはバイプレイヤー的にいい味を出していた

『君の名は』

 作中では高山らーめんがどういった特徴かには触れられていませんので、ここで紹介しておきましょう。
一言で言うと、あっさり系醤油ラーメン。鶏ガラベースでさっぱりした醤油スープに、極細ちぢれ麺が絡んで美味。一般的には出汁(スープ)とかえし(タレ)は別に作るラーメンが多いものですが、高山らーめんは出汁とかえしを混ぜて煮込むんだそうです。
繰り返しますが、作中で高山らーめんが登場したのはほんのわずか。しかも、(この店の店主はある種のキーパーソンですが)仮に高山らーめんが登場しなくてもストーリー進行に支障はない。でも! だからこそ! 読者・視聴者の胃袋を刺激するのかもしれません…!
映画やドラマに一瞬しか出演しないバイプレーヤー(脇役)が注目を集めたときに、“いい味を出していた”と表現されることがありますが、まさに高山らーめんは“いい味を出していた”のです。
そんな高山らーめんをどこで食べられるかというと、当然、飛騨高山エリアには数十店の高山らーめん店があるそうです。また、東京などでは、高山らーめんをウリにしたラーメン店もちらほら見かけますので、食べてみたいという方は飛騨高山エリアまで足を運ばずとも、食べることができるはず。
あの超大ヒット作である『君の名は。』で、ある意味、もっとも“いい味を出していた”高山らーめん、ぜひご賞味ください。

『NARUTO -ナルト-』

『NARUTO -ナルト-』

作品データ/『NARUTO -ナルト-』(16巻より抜粋)作者:岸本斉史 『週刊少年ジャンプ』連載、全72巻 岸本斉史 スコット/集英社

 世界的にも人気が高いメガヒット忍者バトルマンガ『NARUTO -ナルト-』は、うずまきナルトが木ノ葉隠れの里における歴代の勇者“火影”(偉大な忍者)を目指す物語。
しかし、ナルトには出生の秘密があり、木ノ葉隠れの里で仲間外れやイジメにあっていたのです…。

このラーメン屋が、ナルトにとっての癒しの場だった…

『NARUTO -ナルト-』

 幼少期のナルトは、「あいつとは口きくなっつっただろ」、「あいつってさ 家族一人もいねーんだろ」、「いなくなれ」、「バケモノ」など、同じ木ノ葉隠れの里の仲間たちから忌み嫌われる存在でした。
それは、実はナルトの体内に里を壊滅させた妖怪・九尾が封印されているから。ナルトに九尾が封じられたことは口外禁止となっていたため、本人や子供たちはその事実を知らずに育っていましたが、周囲の大人たちはナルトの中に忌まわしき九尾がいることを知っているため、疎外し、嫌うようになっていたというわけなんですね…。
そんなナルトですが、ひねくれたりグレたりせず(イタズラはよくしましたが)、純粋でまっすぐな性格に育っていきました。それは、ナルトの忍者学校の担任教師であるうみのイルカ、そして、イルカがナルトを連れて行ってくれたラーメン屋『一楽』の店主と娘など、数少ないナルトの理解者の存在が大きかったのです。
幼い頃は、辛い思い出ばかりだったナルトにとって、自分という存在を初めてきちんと認めてくれ、ナルト自身も父親のように慕っていたイルカが連れて行ってくれた『一楽』のラーメンの味、そしてラーメンを食べながらイルカや店主親子と交わした会話が、数少ないいい思い出…。
作中にはたびたびナルトが『一楽』を訪れラーメンを食べるシーンが登場しますが、『一楽』でラーメンをズズズッとすするナルトは、たいていニコニコでした。ナルトにとって、『一楽』のラーメン、ひいては『一楽』という場所自体が、とっておきの癒しの場だったんでしょうね!

ナルトが愛し、作者が愛した味が、福岡県で堪能できる!

『NARUTO -ナルト-』

 さて、そんな『一楽』、ナルトファンにはもはや常識レベルの話なのですが、モデルとなった同名のお店が福岡県に実在しているんです。
作者の岸本斉史先生が大学時代に通っていたラーメン屋こそが『一楽ラーメン』。残念ながら岸本先生が通っていたそのもののお店自体は閉店してしまっているのですが、『一楽ラーメン』はチェーン店のため、福岡県ではまだ数店舗、絶賛営業中!
そう、ナルトがイルカと食べていたラーメンは、現実世界でも味わうことができるのです…! もちろん、ナルトが好んで食べていた「味噌チャーシューメン」もあるので、イルカ先生との思い出の味をそのまんま味わえることになります。
ナルトと同じ「味噌チャーシューメン」を注文し、着丼するまでの時間で、『NARUTO -ナルト-』内でナルトが『一楽』のラーメンを堪能しているシーンを読んでおけば、心も胃袋も準備万端。これ以上ないほど最高のコンディションで食べられることでしょう。
なんだったらナルトになりきって、ナルトと同じように豪快にズルズルズルッと麺をすすりつつ、隣にイルカ先生もいると妄想するのもアリ。ラーメンのうまさとイルカ先生のやさしさにほっこりして、つい涙を流してしまうなんてことも…!? ナルトファンなら、人生に一度は食べておきたい一杯であることは間違いないですね!

※情報は記事公開日時点のものです

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