第96回:龍吟の料理について
2003年のオープン以来、国内をはじめ世界からも注目を集める【日本料理 龍吟】。「ミシュランガイド」では6年連続で三ツ星に輝き続け、料理学会では卓越した技術を世界に発信し、常に時代の先をいく山本氏。先日発売された『シェフ推し』でも、ジャンルを超えた幅広いシェフからの信頼も厚い【龍吟】山本氏の目指す日本料理とは。
日本料理の豊かさを伝える
――当初のコンセプトは?
山本:“日本料理をやる”ということは、どういうことなのか?という答えをはっきり持ちたいと思ったんですね。ただ日本料理をつくるのではなく、日本という国がどういう国なのか、自然環境の豊かさなど、どのように料理を通じて伝わっていくのかを見届けていきたいという思いがありましたね。日本の豊かさを世界に伝えていくことが本来、お国の仕事であるならば、いち個人、いち料理人としてそれをやっていくことは、イコール国家職務に携わっていることと同じなのではないか―。そのくらいの使命感を持ってこれをコンセプトに掲げました。
“感覚”を研ぎ澄ますための「前菜」
――本日の消印入りの封筒を開けると、日本地図が書いてある和紙の上にメニューが書いてあるんですが、「始まりは様々な“感覚”から…」とあります。
山本:はい。まずは“感覚”を大事にしてもらいたいという想いがあるんですよね。季節、香り、温度というのは、実際に食べられるものではないんですよね。感覚として「五感で感じるもの」なんです。その「感じるもの」をいかに「大事にしているか」を伝えたいんです。これらを組み合わせることによって、今まで経験したことのないものになるんですね。ちょっとの驚きが気づきになる。お椀やお出汁にいく手前でその感覚を研ぎ澄ます、いわば「感覚の前菜」をお出ししているんです。
名物『泳がし鮎』
「塩を振りただ焼くだけ…偉大なる炭火の“ちから”を愛で合う為に…」とメニューに書かれた夏の風物詩、鮎。頭は自身の脂でカリカリに、お腹はふっくら、尻尾はサクっと仕上がるよう計算しつくされた芸術品がここに。