第107回:プライベートシェフを経て、南米ペルーへ旅立つ
「スペインが、南米が、俺を呼んでいる」と感じていた矢先、イタリアでいい仕事があると紹介を受けた太田氏。とても立派なマダムのお宅のプライベートシェフとして働くことになること1年半。まさに、映画「プラダを着た悪魔」のミランダといっても過言ではないセレブなマダムの華やかかつストイックな食生活を支えた面白いエピソードが満載。そして、ついに南米へ上陸。
マダムの食生活を支えた、プライベートシェフ時代
――「給料も高いし、こんなすばらしい家庭で働けるなんて天国みたいなところだ!」と思ってイタリアへ戻ることを決めた訳ですが、どんな生活を?
太田:はじめの説明は、「うちのファミリーにご飯を作って頂戴」という話だったんですけど、想像をはるかに超えていて。毎日平均10名ぐらいのランチに加えてディナーもほぼ毎日お客様が来られてパーティーを開くんです。彼女がテーマを決めて、「今回は秋を感じるようにして頂戴」とか「今回はデザイナーたちが来るからテーマは黒で」といった感じですね、お部屋の模様替え、テーブルセッティングも仕事に含まれていて、それを家政婦たちと走り回ってやるという感じ。体重管理も僕の仕事でしたので500g増えただけでも雷が落ちました(笑)。
南米ペルーに、アマゾンに魅せられた男
太田:食材の多くの起源や原種を持っていることに加えて、ガストン・アクリオさんって言う料理人がいて、彼は国民支持率50%もあるという情報を得たんです。料理人が国民支持率50%って、大統領になろうと思えばなれるっていうことで、そんなすばらしいシェフがいるのかと。ぜひ、そのシェフに会ってみたい!っという思いで、ペルー行きを決めました。使う食材に関しては、すごく面白かったです。アマゾンの食材も使っていましたし、働きに来ている料理人たちの志がすごく高かった。でも現地の人や料理人ってアマゾンに行ったことがない人たちが多くて、全然知らないんですよ。なので、本もないし、料理本もないし、情報も得られない。だったら、自分で行ってみるしかないなって思いがあって、あのアマゾンに入っていきましたね。
――太田さんらしいな(笑)
最後に後進たちへメッセージを
太田:料理の世界っていうのはいろんなことができるんですよ。ただ料理ができればいいということではなくて、社会に対しても発信していけるような。今私たちができるのはそういうことで、これからの若い世代はもっと違うことができる。その可能性は無限だと思います。そんなに堅苦しく考えずに、ぜひ料理を楽しみながら、料理を好きになり、料理を食べることに喜びを感じてほしいですね。