シェフのヨコガオ vol.19 トレバー・ブライス 氏

フレンチをベースに独創的な和食をつくる英国料理人

 下町の風情あふれる、東京・王子の駅からすぐのところに店を構える【The White Fox】(ホワイトフォックス)。イギリス出身のフレンチシェフの経歴を持ちながら、饗する料理は和の食材を使った和欧創作料理。「日本とフランスの融合」をコンセプトに、双方のよいところを組み合わせてつくる料理は、斬新というよりも親しみやすさとおいしさを追求。和の食材を使い、洋の技法を駆使してつくる料理の数々。発想の面白さと遊び心を散りばめた、トレバー・ブライスシェフのヨコガオに迫った。

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撮影/永友 啓美

知人に会いに訪れた日本で和食に魅せられる

英国のフレンチで初のミシュラン三ツ星を獲得した、伝説の料理人と言われる「ミシェル・ルー氏」を師匠に持つ、イギリス・ノーリッジ出身の料理人、トレバー・ブライスシェフ。実力派のフレンチシェフでありながら、現在は東京・王子の創作和欧料理のお店を営んでいる。

幼い頃から食への関心が高く、19歳でケータリングの専門学校を卒業した。ヨーロッパでは、店を変えることで腕を磨くため、短期でどんどん店を変えていく料理人が多い。ブライスシェフもイギリス、フランスの7店舗で修業を積んだが、なかでもミシェル・ゲラール氏が料理長をつとめる【レ・プレド・ユージーヌ】では、日本人スタジエと仕事をした。彼らと働くなかで日本料理に興味を持ち始め、2回目の研修が終わった後、仲間に誘われて金沢へ。

初めての日本で、新鮮な食材を使った和食を味わい、その匠の技と、素材の持ち味を生かしたシンプルな調理法に魅せられ、「いつかきっと日本に戻ってくる」と誓いを立てたのだという。

トレバー・ブライス 氏

和の食材を使い、洋の技術を駆使してつくる和欧創作料理

ロンドンに戻ったブライスシェフは、新しくオープンするレストランの料理長に就任。金沢で影響を受けた料理のエッセンスを盛り込んだ独創性の高い料理を提供し、「ベストモダン ブリティッシュレストラン賞」を受賞した。それが縁でオファーを受け、2001年に再来日。長野や銀座での経験を経て、06年にマダムの地元である東京・王子に【The White Fox】をオープンした。
コンセプトは「日本とヨーロッパの融合」。日本の食材を使い、フレンチの技法を駆使して料理をつくる。大切にしているのは「バランス感覚」。あらゆるものを足し引きすることで生まれる独自の味わいは、常に全体のバランスを考えながらつくりあげられている。「和と洋を融合させることによって、奇をてらったインパクト重視の料理をつくるのではなく、本当に美味しいと思ってもらえる料理がつくりたい」とブライスシェフ。遊び心が散りばめられた、イギリス人のつくる和欧創作料理は日本人にとっても違和感なく舌に馴染む味わいだ。

右の写真:生のフォアグラでつくる仏の伝統料理をアレンジした『フォアグラのカルパッチョ ホワイトレーズンとゆず風味のブリオッシュクランブルアロエ添え』。

料理写真

梅干しソースと青りんごでつくる『カンパチのマリネ』

代表料理は『カンパチのマリネ 青りんごと大葉、ミョウガ、梅干しソース和え』。英語名の『Kampachi Sashimi』というところからもわかるように、この料理はサクどりしたカンパチを刺身にし、大葉やミョウガ、梅干しソースといった和の食材で和えて盛り付けてあるもので、和えただけなのに仕上がりがマリネのように感じるという不思議な一品。

盛り付けはフレンチで洋風に、梅干しのほどよい酸味とミョウガや大葉の風味、そして青りんごの甘みが爽やかなアクセントをプラスしており、カンパチの刺身にソースが絡み合った、まさに和風の料理に仕上がっている。和の食材を使い、洋の技法を駆使してつくられる、独創性豊かなブライスシェフの和欧料理。

牛ほほ肉の赤ワイン煮込みを赤味噌煮込みにしてみたり、グレープの代わりにアロエを使ったりと、日本とヨーロッパ、それぞれのいいところを取り入れながら、自分のなかでのバランスとオリジナリティを大切にした料理を追求し続けている。

料理写真

料理人のウラワザ~食材をすべて上手に使う秘伝の技 ホタテの塩辛~

通常は捨てられてしまう、殻つきホタテのワタを生かすことができないかと生まれた料理だ。
1.殻つきホタテの貝柱、ひも、ワタをそれぞれキレイに取り除き、
ワタに塩をして1~2日おく(水分を取る)
2.1に酒、しょうゆ、みりん、塩を加えてブレンダーにかけ、なめらかになるまですりつぶす。
3.2にブラックペッパーとレモンの絞り汁、
オリーブオイルを混ぜ合わせ、
繊維にそって切ったホタテの貝柱を
加えて1晩おく。 
※貝柱を混ぜない「塩辛ソース」の
状態で、3週間持ちます。冷凍保存も
可能です。
(その場合も保存可能期間は3週間)

記憶に残る料理人~イギリスにおけるフレンチの第一人者に教わった姿勢~

ロンドンの【ラ・ガブローシュ】オーナーの叔父であり、【ウォーターサイド・イン】のオーナーであるミシェル・ルーシェフ。イギリスのレストランで初めてミシュランの三ツ星を獲得した、伝説のフレンチシェフだ。彼の門下生となるには、年に1度行われる「ROUXスカラシップ」で優勝しなければならない。

ブライスシェフは、96年に優勝し、弟子入りを果たす。彼のすごいところは「食に対する情熱」。料理をつくることから、食べるところまで、徹底的にこだわりを見せる。「彼は門下生を色々なレストランに連れて行き、一流の料理を食べる楽しみとつくる喜びを教えてくれましたね」とブライスシェフ。ミシェルシェフの食に対する情熱は、ブライスシェフにもしっかりと浸透している。

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