築地、本当の実力店。 | ヒトサラ
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あんこう屋 高はし
- 手前から時計回りに『赤メバル煮』、『あなごにこごり』、『本まぐろ赤身刺身』、『時鮭〈身〉』。店のメニューは大半が旬の魚だが、脇役の『ほうれん草のおひたし』や『野菜煮もりあわせ』など、サイドメニューも絶品
- 季節により本マグロ、キハダマグロ、インドマグロを使い分け、常に旬を提供する『本まぐろ赤身刺身』
- 丁寧にぬめりを取って処理された穴子をじっくり炊く『あなごにこごり』。穴子の脂だけで固まるそう
- 築地市場場内にある8号棟の人気店。旬の旨い魚を求め、グルメたちがこぞって通い詰める名店だ
- 店を守るのは、三代目の高橋良和さん。父の味に、修業先で培った和食の技を加えて提供する
最高級の旬の天然物を
シンプルな和食で提供『キンキの煮付』に『赤メバル煮』、『あゆ塩焼き』、『時鮭』、『とり貝刺身』……。店の壁に掲げられたメニューの大半は、その時期、旬の魚を使ったシンプルな和食。築地場内の一角で80年以上に亘り愛される【あんこう屋 高はし】は、築地でも指折りの魚の名店だ。
赤メバルを例にとれば、取材日の煮付の価格は2000円。そう、「取材日」と書いたのはその日の仕入れにより価格が変動する時価であるのだ。
「本当は2200円でもいいんだけど、いいのが安く入ったから今日は大特価2000円。魚の価値が、分かっている人は驚くと思いますよ」とは3代目・高橋良和さん。
赤メバルの煮付けが2000円。価格だけを見れば、少々高いと尻込みしてしまう人もいるだろうが、高い安いは食べてから。丸々と太った赤メバルは、ふっくらと炊きあげられ、ひと口味わえば繊細な身質はやさしく、メバル本来の甘い脂は舌に余韻として残る。そう、この店では、料亭などでも使用される最高級の天然物を、毎朝、良和さんが仲卸から仕入れ、提供しているのだ。さらにその後の丁寧な下処理も見事。ウロコを取り、傷みやすい血合いなどは徹底的に洗い、塩水へ。翌日まで寝かせた魚は、驚くほど旨みを蓄えるという。築地が認めた魚の名店。高い安いは食べてから、である。 -
鳥めし 鳥藤 分店
- 玉子ともも肉の食感が絶妙な名物『親子丼』に、香ばしい照り焼きとジューシーな粗挽きそぼろの『鳥重』、甘辛の濃厚な味わいがクセになる『ぼんじり温玉のせ』。同じ鶏肉料理でも実にさまざまな味わいが楽しめる
- 鳥取県は大山周辺の天然水などで育てられた大山鶏。脂ののり、食感、旨みのバランスはさすが銘柄鶏
- 照り焼きとそぼろのほか、レバーと砂肝の甘辛煮、キンカンも味わえる『鳥重』。『親子丼』に勝るとも劣らぬ逸品だ
- 店長の久保真亮さんは、もともとこの店の常連客。鶏肉の旨さに惹かれ、【鳥藤】へと入社した
- 玉子のふわふわ、とろりの食感が命の『親子丼』は、目を離すことなく絶妙な火加減で仕上げられる
鳥めし 鳥藤 分店
お問い合わせ専用番号:03-3543-6525 住所:東京都中央区築地4-8-6
営業:7:30~14:00LO
休日:日曜・祝日、休市日(築地市場に準ずる) お店の詳細情報を見る鶏肉ひと筋で100年以上
老舗の矜恃が詰った名物親子丼名物の親子丼が運ばれて来るなり、鼻孔をくすぐるダシの香り。堪らず一口頬張れば、白身はプルンとした食感で、割り下の味を吸い込んだトロトロの黄身が全体を包み込む。そして、肝心の鶏肉はふっくらと柔らかく、噛むほどに旨みが広がっていった…。
築地場外市場にある、明治40年創業の鶏肉の卸売店【鳥藤 本店】。その老舗が、卸しの中心に扱っている大山鶏の美味しさを知ってもらいたいとオープンしたのがここ【鳥めし 鳥藤 分店】。創業から100余年、鶏肉ひと筋に貫いてきたこだわりは、本店と変わらない。
鮮度が命となる鶏肉は、毎朝産地から届いた丸鶏を部位ごとに捌く。ジューシーで柔らかく、クセがないのは何より鶏肉が新鮮な証拠といっていい。その鶏肉を包み込む玉子もまた親子丼、強いては鶏肉の旨さを支えるポイントに。濃厚な白身と黄身が特徴の奥久慈卵を使い、溶き方一つに神経を注ぎ、“ふわとろ”の食感を引き出すために2度に分けて火にかけるという。
「うちは鶏肉しか知らない店ですから。鶏肉を美味しく食べてもらい、その魅力を知ってもらえたら」と笑うのは店長の久保真亮さん。親子丼を平らげてその旨さを知った客が、帰りに本店で鶏肉を買い求める。そんな光景もここでは珍しくない。 -
寿司大
- 行列店といっても『おまかせ』をひと皿でドンと出すことはない。客の食べるスピードを見計らい一貫ずつ握ってくれる。旨いだけではない、食を楽しめる雰囲気づくりもまたこの店の魅力のひとつだ
- この日に登場した『おまかせ』のネタを並べるとご覧の通り。ネタの味を考慮し、緩急をつけて握る
- おまかせで最初に握ってくれる『大トロ』。お腹が減っているからこそ、はじめはガツンと味のあるネタで
- ネタは産地にこだわらず、旨いと思える旬の魚を厳選。20年以上積み重ねてきた確かな目利きがものをいう
- 「万全な体調で寿司を握りたい」と体調管理も怠らない店長の漆原さん。職人の矜恃は脱帽ものだ
寿司大
お問い合わせ専用番号:03-3547-6797 住所:東京都中央区築地5-2-1 築地市場6号館
営業:5:00~14:00までに並んだ順番待ちの最後、※水曜のみ行列の締切を調整し14:00に閉店
休日:日曜・祝日、その他不定休あり お店の詳細情報を見る3時間待ちに耐えた者の特権
築地場内一の人気店の極上寿司河岸がまだ静まりかえったままの午前2時過ぎ。軒先にポツリ、ポツリと並び始めた客は、その後も続々と数を増し、開店直前には30人以上の大行列をつくる。営業時間は午前5時から午後2時。カウンターわずか13席の店に、1日およそ180人の客が訪れるという【寿司大】。それゆえ、3~4時間待ちは当たり前。これが築地場内一の人気店の日常である。
無論、行列をなしてでも人々が並ぶのは旨くて安い極上の寿司を求めてのこと。築地場内にあるのだから魚の鮮度は言わずもがな。たった4000円で楽しめてしまうおまかせは、寿司10貫に巻物、玉子が付くという内容だ。
この日、最初に出された大トロを豪快に頬張って恍惚の表情を浮かべれば、次々と繰り出される寿司ネタ。昆布締めにされた金目鯛は、しっとりと皮まで柔らかく、ふっくらとしたアナゴの絶妙な炊き加減…。素材任せではなく、どのネタにも江戸前の仕事が施されているから、しっかりと魚の旨みが引き出されているのが分かる。人気店にありがちな、せかされる雰囲気は微塵もない。最後にサービスで出される、お好みの一貫を味わえば、「またこの行列に並ぼう」と心に誓うのである。 -
てんぷら黒川
- 「ありきたりなものばかり揚げてるんじゃ、つまらないでしょ」と店主の黒川丈治さん。魚介や野菜のほか、デザートにふるまわれる『抹茶アイスの天ぷら』も好評だ。技術とアイデアでほかにはない天ぷらを提供する
- ランチの『かき揚げ天丼』は小エビやホタテがごろごろ入り、このボリューム。丼つゆも食欲をかきたてる
- 厳選素材にこだわる『雪』コースの食材。活海老、穴子、稚鮎、生麩や季節の野菜を揚げる人気のコースだ
- 築地場外の路地裏にひっそりと佇む天ぷらの名店。小さな店なので、訪れる際は予約がベター
- ごま油の香ばしい香りが立ち込める店内。特等席は揚げたてが直箸で渡される5席のカウンター
てんぷら黒川
お問い合わせ専用番号:03-3544-1988 住所:東京都中央区築地6-21-8
営業:9:00~L.O.13:45/17:00~L.O.20:00
休日:日曜・祝日 お店の詳細情報を見る生粋の職人技とアイデアで
旬の野菜が天ぷらに「たぶん天ぷらはね、揚げる人のセンスと教わる先生。シンプルなだけに、それがきちんとしていればね」
そう言って、店主・黒川丈士さんが鍋に落としたのは、黄色い物体。そう、卵黄だ。それをものの十数秒で揚げると、まずは味わえと勧めてくれる。その丸い不思議な天ぷらを口に運べば、噛んだ瞬間にとろりと黄身が溢れ、口いっぱいに幸せが広がるという寸法だ。
「この中身を半熟で揚げる感覚が難しいんだよ」と照れながら笑う、黒川さん。都内の名店を渡り歩き、師と呼ぶべき3名の職人から天ぷらのイロハを仕込まれたという。その後は、都内の高級ホテルの天ぷら店を10年以上に渡り任された後、独立。天ぷら一筋、30年以上。現在の築地の店では、さらにアイデアをプラスする。
「千葉の契約農家から直送で野菜が届く。大きなダンボールの中身は毎回お楽しみで、何が届くか分からない。採れたての野菜。それを如何に揚げるかだね」
そう、黒川さんの手にかかれば、トマトにキュウリ、カブなどが、いとも簡単に天ぷらの種となる。さらに揚げるのが困難であろう小松菜なども、一度、海苔で巻き安々と揚げてしまうのだ。
目の前の市場で毎日仕入れるエビやホタテに、千葉から届く旬野菜。そこに黒川さんのセンスをピリリと利かせた極上の天ぷら。まずい訳がない。 -
とんかつ八千代
- ジューシーなとんかつも好評だが、やはり人気が高いのは魚介のフライ。生でも味わえる鮮度と寿司屋に負けない質を誇る素材を、特製ブレンド油でからりとフライに。香ばしい衣のなかには、素材本来の旨みがぎゅっと凝縮されている
- 看板料理の車海老フライ1600円。活のためプリプリ弾ける食感が楽しめる。頭に詰まった味噌も濃厚なおいしさ
- たっぷりの千切りキャベツに大振りのフライ、ライスも大盛りで。このボリュームも河岸の食堂ならでは
- 昔から変わることのないシンプルな店内。飾り気はないのにどこか落ち着ける雰囲気に満たされている
- フライを揚げて半世紀のベテラン・石塚英明シェフ。素材の個性を限界まで引き出す調理は、まさに名人の技
3種のブレンド油で揚げる
香ばしく味わい深い魚介フライ東京の台所、築地市場。忙しなく働く市場関係者を横目に、飲食店が集まる一角へ。曇りガラスの引き戸の先、わずか12席のカウンターが築地における揚げ物の聖地【とんかつ八千代】だ。鮮魚を扱う職人が多い築地にはその反動からか、意外にも揚げ物の店が多い。しかし通り一遍の味で食のプロたちの舌は満たせない。創業昭和15年。今日の揺ぎない評判は、客に揉まれ研鑽を重ねることで、徐々に築きあげられた。
メニューの種類は多いが、店の実力を端的に表すのはアジ、ホタテ、車エビなどの魚介フライだ。「寿司屋と同じ質のもの」という新鮮な素材を、ラード(豚脂)とヘッド(牛脂)、サラダオイルを独自にブレンドした油で香ばしく揚げる。ラードとヘッドが衣に旨みを纏わせ、サラダオイルは軽快な食感を演出。このバランスこそが、おいしさの肝。揚げ物のおいしさを改めて実感できる仕上がりだ。
大盛りのごはんや千切りキャベツ、たっぷり添えられたタルタルソースなどは、働く人たちにスタミナをつけてもらいたいという思いから。そんな温かみある店の絶品定食、遠方から足を運んででも味わう価値がある。
※このページのデータは、2014年8月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。