浴衣で粋に訪れたい江戸情緒を感じる味。 | ヒトサラ
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喜寿司
- すべてのネタに仕事を加える正統派の江戸前寿司。その技を身につけるには「5年や10年じゃまったく足りない」と店主・油井隆一さん。代々伝わる技を守りつつ、さらに磨き上げることも老舗に課せられた使命
- まぐろは岩手県山田湾または青森県岩崎漁港などから届く上質な本鮪。寿司はすべておまかせ1万円の一例
- 鯵の産地は旬をおいかけて北上。この日は鹿児島産。ネタとシャリの間に生姜と浅葱を挟むのがこちらの伝統
- 天然物にこだわるため、季節に応じてがらりと品揃えが変わる。旬の魚介のもつ力強い旨さを存分に堪能できる
- 創業は大正12年。現在の店は戦後すぐに建てられたもの。随所に見える歴史の重みが、風情を演出している
喜寿司
予約専用番号:050-5871-3888 お問い合わせ専用番号:03-3666-1682 住所:東京都中央区日本橋人形町2-7-13
営業:11:45~14:30/17:00~21:30、土曜11:45~21:00
休日:日曜・祝日(月曜が祝日の場合は日曜昼のみ営業) お店の詳細情報を見る選びぬかれた江戸前ネタが
伝統の技でさらに輝きを増す引き戸を開けると目の前に伸びる無垢材のカウンター。22尺の木曾檜は真っ白に磨き上げられ、凛とした空気を醸す。老舗らしい建物の風格に、誰もが思わず居住まいを正すことだろう。創業大正12年。江戸前寿司の技を今に伝える名店【喜寿司】は、90年以上変わらぬ姿で今日もゲストを迎える。
そんな建物同様に、供される寿司も歴史に基づいて仕立てられたもの。すべてのネタに丁寧な仕事を施した正統派の江戸前だ。繊細な隠し包丁を入れた赤身、オボロを挟んだ茹で海老。鯵ならシャリとネタの間に薬味を隠す。ふわりと柔らかい穴子に塗られる濃厚なツメは、昔ながらの手法でじっくりと煮詰めて完成。どれも「決して外してはいけない」という江戸前寿司の鉄則だが、近頃は自前で手がける店はめっきり減ってきているという。
「素材が良いのは当たり前。そこにどんな仕事を加えるか」と3代目店主・油井隆一氏。それこそが老舗の誇りであり、職人としての矜持。実直に伝統の技を守り、惜しまぬ手間暇で上質な寿司に昇華する名人のそんな仕事ぶりに、江戸前寿司の美学が垣間見える。 -
桜なべ 中江
- ロース(写真)のほかヒレ、バラ、霜降りなどがある『桜なべ』。割り下がふつふつと煮えてきたら江戸甘味噌の特製ダレを溶かしていただく。ロース肉は煮すぎず、添えられた脂身は味が染みこむようしっかり煮るのがポイント
- 『馬刺』にはあえて“鍋用”のロースを使う。ニンニクを添えないのは馬肉特有の臭みがないから
- 桜肉には、福岡・久留米の牧場で中江専用に育てられた食肉馬を使用。6~8歳まで育て、脂の旨みを引き出す
- 秘伝の割り下と、初代・中江桾太郎が考案したという味噌ダレ。100年以上に渡って伝統の味が受け継がれる
- 現在の建物は関東大震災後のもの。一帯が焼け野原となった東京大空襲の際も、ここだけは奇跡的に焼け残った
桜なべ 中江
予約専用番号:050-5871-3891 お問い合わせ専用番号:03-3872-5398 住所:東京都台東区日本堤1-9-2
営業:17:00~L.O.21:30、土曜・日曜・祝日11:30~L.O.20:30
休日:月曜(祝日の場合は営業し、火曜休) お店の詳細情報を見る伝統の桜なべをつついて一献。
文明開化の味との風情に酔う東京下町の郷土料理ともいうべき桜鍋が誕生したのは、庶民にとって牛肉がまだ高嶺の花だった明治初期。栄養価が高く、しかも手頃な価格で味わえることから、文明開化の味として当時流行した牛鍋の代わりとして生まれた。最盛期には東京中に数百を超える桜鍋の店があったといい、とりわけ吉原周辺はその激戦区でもあった。そんな吉原大門の門前にあるのが、暖簾を掲げ109年になる【桜なべ 中江】である。
「創業した時には、この界隈だけですでに20以上の桜鍋専門店があったといいます。遊郭で賑わった時代ですから、栄養価が高い上に手早く食べられて、精の付く桜鍋が愛されたのでしょう」とは4代目・中江白志さんだ。
そうして東京に根付いた桜鍋だが、その鍋に欠かせない味噌ダレを考案したのは実はこの店だ。醤油とザラメで仕立てる秘伝の割り下に桜肉を並べ、火にかけながら江戸甘味噌をベースとしたタレを溶かしていく。そうすることで、淡泊な桜肉にコクを与えるとともに、味がまろやかになる。
かつての吉原界隈にズラリと並んだ桜鍋の専門店も現在はここだけ。国の有形文化財にも登録された築約90年の建物で伝統の桜鍋をつつき、下町風情を粋に楽しんでほしい。 -
日本橋 玉ゐ 本店
- 名物の『箱めし』。天然穴子の滋味深さを堪能できる一品だ。穴子の仕上げは『煮上げ』と『焼き上げ』から好みで選ぶことが可能。穴子の焼き骨でとった出汁が付いているので、少し残してお椀に移し、お茶漬けでシメる楽しみも
- 煮穴子を出汁巻き玉子でくるんだ、う巻きならぬ『あ巻き』。表面にかけたコクのあるタレが料理の味を引き立てる
- 酒の肴にオーダーしたい『骨せんべい』。油で揚げる前に焼くひと手間が、カリカリの食感を生む秘訣
- コクと旨味を兼ね備えたタレがこの店の真骨頂。その味を出せるのは大量の穴子を調理する専門店だからこそ
- 店は昭和28年に建てられた日本家屋を利用。古式ゆかしい雰囲気の中で穴子料理を味わうことができる
日本橋 玉ゐ 本店
予約専用番号:050-5871-3889 お問い合わせ専用番号:03-3272-3227 住所:東京都中央区日本橋2-9-9
営業:11:00~14:30(L.O.14:00)/17:00~21:30(L.O.21:00)、
土曜・日曜・祝日11:30~15:30(L.O.15:00)/16:30~21:00(L.O.20:30)
休日:無休
お店の詳細情報を見る昭和の風情漂う木造一軒家で
穴子を極めた職人の味にとっぷりと浸る再開発が進み、新たに生まれた大型の商業施設が話題をさらう日本橋界隈。その路地裏に店を構える【日本橋 玉ゐ 本店】は、道行く人々が思わず目を見張るほどの古めかしさ。時代に取り残されたような木造の一軒家が、この店のシンボルだ。
穴子専門店としてオープンして9年目。建物は戦後酒屋として建てられたものだが、「店を始めるにあたり日本橋でこのような家屋に出合えたのは大きかった」と統括部長の佐藤裕二さんは言う。社長ほか歴代の店長はいずれも寿司職人として修業を積んだ人。江戸前寿司の技を活かした穴子料理を提供する場として、これほどふさわしい環境はないからだ。
看板料理は、『穴子箱めし』ふんわりと煮上げた穴子は口の中でホロリと崩れるほど柔らかい。何よりも、深みのあるタレが秀逸だ。「寿司店とは比較にならないほど大量の穴子を煮た汁を、さらに煮詰めていく。ウチでしか出せない味ですね」と杉村裕次郎店長は胸を張る。クラシカルな煮穴子のほか、表面をカリッと焼いた『焼き上げ』を選ぶことも可能。セットには出汁が付き、最後は茶漬けでシメることもできる。
それは穴子に惚れ込んだ職人たちが、たどり着いたひとつのスタイル。この店で穴子の魅力に開眼する客は、後を絶たない。 -
明神下 神田川支店
- 鰻重、吸い物、香の物、果物が付く『鰻重御定食』。ふわりと舌に伝わる鰻の風味は素材の良さ、手仕事の確かさが感じられる。秘伝のタレのコクも絶妙な味わい。米は茨城県の農家から購入するコシヒカリを使用している
- 蒸してから焼き上げる『白焼き』。まずはそのまま、次に好みで醤油と山葵で。鰻の大きさによって価格が異なる
- アテにも最適な『きも焼(二本)』。ヒレ、向こう骨をキモと共に串に打ち込んでからタレで漬け焼きにする
- ハチマキ姿がよく似合う店主の多辺賢一さん。先代より受け継いだ技を磨き、日々、鰻と真摯に向き合う
- 戦後に建てられた木造家屋。客室は全4室からなるが、襖を開いて大人数にも対応できる和室を用意している
明神下 神田川支店
予約専用番号:050-5871-3892 お問い合わせ専用番号:03-3631-3561 住所:東京都墨田区両国1-9-1
営業:11:30~14:00(L.O.13:00)/16:30~21:00(L.O.20:00)
休日:日曜・祝日 お店の詳細情報を見る個室でゆったり味わう
一途に磨かれた熟練の技と味ふわり、とろりと舌の上に広がる身は程よく脂がのり、濃すぎず深みのあるタレの風味がそこに加わる。実直に伝統を受け継いできた職人の技が息づいた鰻は、江戸時代から人々を虜にしてきた江戸前のひとつ。
大正7年創業の【明神下 神田川支店】は、鰻問屋出身の初代店主が腕を認められ、江戸時代創業【明神下 神田川本店】から初めて暖簾分けを許された一軒。鰻屋の命とも言えるタレは暖簾分け時に本店から分けて貰ったものだが、その当時から継ぎ足してきたタレは立派な支店の味となっている。「鰻の旨さはご飯と一緒に食べてこそ」と話すのは、三代目の多辺賢一さん。「本店さんより少しまろやか」と評すタレは、鰻と白飯の巧みな繋ぎ役となっている。鰻は流通の安定性から国産養殖ものに限るが、使用するのはシラスウナギの池入れから1年以内に出荷される新仔(しんこ)のみ。絶妙な火入れによる、ふっくりやわらかい鰻を食べさせるのがこちらの信条だ。
昭和26年築の木造家屋には先代ゆかりの力士の写真などをレイアウト。障子を配した趣ある和室で江戸時代にルーツを持つ鰻の味をじっくりかみ締めたい。 -
室町砂場
- 6~8月頃に限定で登場する『涼味とろろそば』。さっぱりと仕立てた汁の上には、とろろ、じゅんさい、おくら、蕎麦の実が乗る。薬味は梅肉と青のりで、更なる爽やかさを演出。蕎麦は一番粉で打った香り高い「もり」
- 夏季限定の料理『冷し冬瓜 鳥味噌掛け』。鶏挽き肉と味噌を練ってつくるコク深い特製味噌が決め手
- 蕎麦前の代名詞である『玉子焼』は、そばつゆと出汁の風味が自慢。触れるとふるふると揺れるほど柔らかい
- 四季の流れを映す美しい坪庭もある。店は平成20年に大きく改装したが、情緒漂う雰囲気は今も昔のまま
- 燗酒は菊正宗特選、冷酒は菊正宗樽酒と純米酒蔵人のみ。蕎麦に合う味を厳選した結果、辿り着いた銘酒だ
室町砂場
予約専用番号:050-5871-3890 お問い合わせ専用番号:03-3241-4038 住所:東京都中央区日本橋室町4-1-13
営業:11:30~21:00(L.O.20:30)、
土曜11:30~16:00(L.O.15:30)
休日:日曜、祝日 お店の詳細情報を見る滑らかさと風味を併せ持つ
純白の細切り蕎麦が名物せいろの上で白く輝く細切りの蕎麦。つるりと滑らかな口当たりでありながら、噛みしめると上質な蕎麦の香りがふわりと鼻に抜ける。これぞ【室町砂場】の、いや江戸前蕎麦の代名詞。蕎麦の実の中心部分だけを挽いた更科粉を卵でつないだこの蕎麦は、明治2年の創業以来代々受け継がれる伝統の味だ。
そんな蕎麦の香りを活かすため、つゆは江戸前の濃い口。端を少しつけるだけで十分な濃さのため蕎麦の香りを消さず、蕎麦本来の味と出汁の風味を同時に楽しむことができる。これもまた、代々伝わる店の伝統。長い時間をかけて磨かれてきた老舗の技だ。
無論、伝統に胡座をかくだけの店ではない。常に吟味し、その時期に最良の蕎麦の実だけを仕入れる。献立には旬の素材を取り入れた季節の蕎麦前も並ぶ。時代の流れに合わせ、ときにはメニューに大鉈も振るう。それでも馴染み客の足が遠のくことがないのは、日本料理の修業も経験した5代目の技の賜物だろう。味わい深い蕎麦前で酒を舐め、シメに名物の蕎麦をひとつ。そんな粋な楽しみ方が、この店にはよく似合う。
※このページのデータは、2014年6月上旬取材時のものです。メニュー、営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。