1. ヒトサラトップ >
  2. シェフのヨコガオ >
  3. プリンスホテルにバイキングを取り入れた立役者 〜 大矢弘榮 氏

シェフのヨコガオ vol.16 大矢弘榮 氏

オープンから12年。進化し続ける人気のイタリアン

東京・野方の駅から徒歩1分。【グランシェフOHYA】の大矢シェフは、全国各地のプリンスホテルの立ち上げに関わり、ホテルビュッフェの礎を築いた料理人だ。当時、「斬新すぎる」として周囲から受け入れられなかったバイキングの導入秘話や、特製ブイヤベースの隠し味をご紹介。

撮影/菊池 崇文

起死回生をかけて生み出したホテルバイキング

プリンスホテルでバイキングを始めた立役者として知られる大矢シェフは、1943年樺太生まれ。戦争に翻弄されるなか6歳で函館に引き上げ、中学を卒業すると同時に働きに出る。苦労をかさね、18歳の頃から本格的に料理の道へ進む。東京の【都市センターホテル】での修業を経てプリンスホテル「トリアノン」で、生涯の師と仰ぐ、堀田シェフに出会うことになる。

フランス帰りの堀田貞幸シェフがつくる料理は衝撃的だった。大矢シェフは、彼から本場仕込みのフランス料理を必死で学び、40歳で新宿プリンスホテルのレストラン【シャトレーヌ】のシェフに赴任する。ここで大矢シェフは赤字続きのレストランの起死回生を目指して必死に働いた。この時に考えたのが、宴会料理の変形版ともいえる「バイキング・ランチ」だ。

料理のパフォーマンスや色々な料理が楽しめる、今では定番のバイキングも、当時は「斬新すぎる」として周囲からの批判を浴びた。だがバイキングは手元にある食材を使いこなしてつくる料理が提供できるため、ホテルはコスト削減ができ、お客様はどんな料理が登場するかとワクワクした気持ちになるため、一石二鳥。レストランの前には連日行列ができ、赤字だったホテルは一気に息を吹き返した。そしてホテルバイキングが取り入れられるようになっていった。

こうした実績が認められて総料理長に登り詰めたことをきっかけに、【幕張プリンスホテル】のオープン総料理長、【品川プリンスホテル】のオープン総料理長など、2000年まで「プリンスの顔」として活躍。その後、マダムと二人で庶民派のフレンチレストランをはじめて12年が経つ。

上品に盛られた高級なホテル料理とは違い、味は本格的ながら、ボリューム満点で価格もかなり抑えめ。これは「レストランは美味しいものを、お腹いっぱい味わう場所でありたい」という大矢シェフのポリシーが表現されている。

大矢弘榮 氏

定番料理をサッパリとアレンジした『夏のブイヤベース』

大矢シェフのつくる料理は、クラシックなフレンチがメインだが、そのなかに独自の工夫を凝らした進化系の料理『夏のブイヤベース』がある。

エビ、ホタテ、イカなど、その時期に仕入れた魚介4種を使用し、サフランの香りが豊かなフランス料理の『ブイヤベース』は、日本でいう寄せ鍋のような料理。濃厚な味わいのスープは冬の定番料理とされてきた。この料理を夏の食欲が落ちた時でも味わうことができないかと言われてつくられたものだ。

4種の魚介で取ったダシに生クリームやバターを加えてつくる従来のブイヤベースとは異なり、まずエビの頭とひき肉をミンチにして3時間ほど煮込み、スッキリとしたコンソメ状のスープを取ることから始まる。スープができたら野菜とソテーした魚、白ワイン、サフランを加えてさらに煮込むこと1時間。隠し味にアンチョビ醤油を使うことで、日本人に親しみやすい味わいに仕上がる。

完成したブイヤベースは、サフランの香りや魚介の旨みが凝縮され、コクのある味わいでありながら、後味はあっさり。生クリームやバターのかわりにひき肉を使うことで味に深みがプラスされ、サラリと味わえる一品ながら、満足感も十分にある。この料理はもともと大矢シェフの常連客でもある医師から、「もっとサラッと食べられるブイヤベースはないかな」と言われて生み出された料理。今夏のスペシャリテとしてメニューに登場するそうだ。

70歳を超えてなお現役として厨房に立ち、心から料理をすること、美味しい料理を多くのお客様に届けたいという大矢シェフの料理には、ホテルの西洋料理を発展させてきた先駆者のひとりとしての歴史があった。

シェフのウラワザ〜ホワイトソースの隠し味に少量の醤油〜

シチューやグラタンなど、クリームソースを使った料理をつくるとき、隠し味にほんの少しの醤油を加えると、親しみやすい味わいの料理になる。これは、「醤油」や「味噌」になじみの深い、日本人の味覚ならではの感覚だということができるだろう。

通常は醤油でよいのだが、これを魚醤(しょっつるなど)にすると、
発酵した魚の旨みが加味され、よりコクのある味わいの料理をつくる
ことができる。

一見ミスマッチに思える組み合わせ
ながら、意外にもしっくりと舌になじむ
ひと工夫だ。

シェフの記憶に残るシェフ〜引き算の料理哲学を教えてくれた和の料理人〜

生涯の師と仰いでいる料理人、それはプリンスホテル【ル・トリアノン】で出会った堀田貞幸シェフ。フランスの三ツ星レストランで修業を積んできた堀田シェフに初めて出会ったとき、それまでのフランス料理観がガラリと変わったという。本場の料理について教えを乞い、一度教わったことはすべてメモをする。不明なことは徹底的に調べて理解しながら、教えられた通りに料理をつくり、確実に覚えていった。3年間の修業で学んだレシピは1000以上。
それは今でも大切に店の棚に
置いてある。「フランス帰りの堀田
シェフの料理はセンスから味、
スープの取り方ひとつからまったく
違っていま したね」と大矢シェフ。
この時に学んだことが、現在でも
大きな指針になっているという。

グランシェフOHYA 【東京・野方】

【営業時間】
ランチ  11:30〜 15:00
ディナー 17:30〜22:00
【定休日】
月曜日
【TEL】
03-3338-2941

詳しく見る

グランシェフOHYA

新着記事

鈴木好次 氏

独自に研鑚を重ねた、こだわりの割烹料理

鈴木 好次 氏
【東京・学芸大学】

谷 利通 氏

「美味しい瞬間」にこだわるフレンチの名料理人

谷 利通 氏
【東京・南青山】

木下 威征 氏

フレンチの枠を超えた独自の「木下料理」を追求

木下 威征 氏
【東京・白金】

高見 博史 氏

伝統に独創性を盛り込んだ大人のイタリアン

高見 博史 氏
【東京・渋谷】

田中義和 氏

足し算のフレンチにこだわる個性派シェフ

田中 義和 氏
【東京・麻布十番】

深町正男 氏

山の上ホテルのてんぷらの味を伝承する職人魂

深町 正男 氏
【東京・日本橋】

河野 透 氏

上質なフレンチを生み出す、職人気質の料理人

河野 透 氏
【東京・恵比寿】

高瀬健一 氏

柔軟な姿勢で自在に変化するイタリア料理

八木 康介 氏
【東京・代官山】

高瀬健一 氏

菜食健美がテーマの広東料理

高瀬 健一 氏
【東京・丸の内】

原田慎次 氏

「香り豊かなイタリアン」を生み出す料理人

原田 慎次 氏
【東京・銀座】

トレバー・ブライス 氏

フレンチをベースに独創的な和食をつくる英国料理人

トレバー・ブライス 氏
【東京・王子】

木下威征 氏

フレンチの枠を超えた、独自の「木下料理」

木下 威征 氏
【東京・白金】

大矢弘榮 氏

ホテルのランチバイキングの立役者

大矢 弘榮 氏
【東京・野方】

玉木 裕 氏

四季を感じる、日本人向けフレンチ

玉木 裕 氏
【東京・銀座】

高見 博史 氏

伝統に独創性を盛り込んだ、大人のイタリアン

高見 博史 氏
【東京・渋谷】

山崎 美香 氏

江戸料理をこよなく愛する女将の鍋

山崎 美香 氏
【東京・神楽坂】

小林 武志 氏

丁寧さへの追及が生んだ、独自の中華

小林 武志 氏
【東京・三田】

秋山 能久 氏

美しさを追求した和の野菜料理

秋山 能久 氏
【東京・銀座】

木村 巧 氏

誰もがときめく、芸術的割烹料理

木村 巧 氏
【東京・西麻布】

片岡 護 氏

笑顔を結ぶパスタ

片岡 護 氏
【東京・西麻布】

岡本英嗣 氏

東京・銀座に現れた日本料理の新星

岡本英嗣 氏
【東京・銀座】

宗像康雄 氏

ビストロと自然派ワインを求めて

宗像康雄 氏
【東京・飯田橋】

アグース・ウィアント 氏

インドネシアの家庭料理 〜故郷の味を伝える

アグース・ウィアント 氏
【東京・目黒】

福田憲一 氏

西麻布の名店で味わう情熱イタリアン

福田憲一 氏
【東京・西麻布】

水野敏行 氏

野菜を味わうためのフレンチレストラン

水野敏行 氏
【東京・原宿】

≫「シェフのヨコガオ」トップページへ

▲プリンスホテルにバイキングを取り入れた立役者 〜 大矢弘榮 氏  ページトップへ